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俺だってこのままでいいとは完全に思っていない。
このままの方があくまで安全だというだけ。
玉や宮っちを見てたら一歩踏み出すことの重要性はものすごく感じてる。
モヤモヤしたものは晴らした方がいいに決まってる。
「千ちゃん応援してるよ」
「うん。ファイト」
まだ具体的に何も描いてないけど何だか出来るような気がした。
スケッチブックを開こうとしたら。
「宮田さん玉森さんこんにちは」
Aちゃんが入ってきた。
「千賀さんやっと取り掛かるんですか?」
「うん、取り掛かれそう」
「良かったです」
Aちゃんは本当に安堵したような表情。
あと一つが描けないってだだこねてたからなあ。
最近Aちゃんに甘えてばかりだ。
これじゃどっちが上か下か分からないや。
いや元々そういう意識はないけど。
「Aちゃんは作品の進捗具合はどう?」
「1作は出来たんですけど、2作目はまだ……」
「じゃあ俺のお守はいいから、しばらく自分の作品作りに集中していいよ」
「えっ?」
「俺も集中したいからさ。大丈夫、スケジューリングはちゃんとするから」
「そうですか?」
「うん。俺はAちゃんの才能をこのまま見る人が少ない状態なのが嫌だからさ」
何言ってるんだろうな、俺。
でも心にもないことは言ってないわけで。
「じゃあしばらくは制作に集中させてもらいますね」
「うん。お互い頑張ろうね」
「では、失礼します」
Aちゃんの滞在時間は数分だった。
「ちょっと千ちゃん」
また玉と宮っちの声が重なった。
「あれじゃ距離置かれたと思うよ」
「そうだよ。俺と玲美ちゃんみたいだったよ」
「でもこれから描きたいものは彼女になるべくなら見られたくないし、Aちゃんはまだ完成してないって言うし」
「でもなあ」
「全く心にもないことじゃないから。師匠が何でAちゃんを宛がったのかって考えたらさ。彼女には大きくなって欲しいもん」
「千ちゃんの手から離れても?」
少し想像してみる。
でもやっぱり彼女の成功を願ったら。
「いいんだよ」
半ばそう言い聞かせ二人が心配そうに見つめているのを余所に俺は鉛筆を手に取った。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2021年11月23日 14時