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待ち合わせたレストランに来ると彼は私に気付いて手を上げた。
「久しぶり。高嗣くん」
「おひさ」
彼はいとこの二階堂高嗣。
4つ下で高校教師をやっている。
ドリンクバーを注文して彼の向かいに座る。
「結婚おめでとう」
「ありがとう」
「体調どう?」
「問題ないよ」
麦茶をストローで吸う。
そう、私は結婚した。
仕事を辞めて故郷に帰ったときに2つ上の元彼に再会して。
宏光さんが忘れられない私は次の恋なんて考えられなかったけど、妊娠が判明して、その彼と結婚することになった。
もちろん元彼の子供じゃない。
宏光さんとの子供だ。
妊娠が分かったときは本当に嬉しかった。
愛する人との子を産めるかもしれないと思ったら、生きる気力が湧いてきた。
「高嗣くんはどう?最近」
「まあ普通?」
少し自嘲的に笑う彼になんとなく宏光さんと重なって見えた。
「Aちゃん、不倫してこっちに帰ってきたんでしょ」
「高嗣くんまで知ってるのか」
「母ちゃんが言ってたよ」
私が不倫して帰ってきたことは身内にも教えてなかったのに、どこから伝わってきたのか、いつの間にか高嗣くんにも伝播してるらしい。
「禁断の果実の味はどうだった?」
そう質問する高嗣くんの目は笑ってなかった。
もしかして高嗣くんも?
「甘かったよ。……高嗣くんもなの?」
「俺はちょっと種類違うかもしれないけどね。美味しいよね」
こう言った後、ニコッと笑って。
「旦那さん器が大きすぎるでしょ。他人との子を自分の子だと思って守るだなんて」
「……うん」
高嗣くんから漂う不穏な空気を感じながら私は頷いた。
本当に彼は理解が良すぎる。
彼との子じゃないのに。
ありがたいから利用させてもらうことにした。
「元気な赤ちゃん産まれるといいね」
「うん。ありがとう」
私はこの罪を一生背負うことになる。
そして私が宏光さんの子供を身ごもったことはあの人に一生知られてはいけない。
そのために結婚するしかないの。
これが宏光さんを守る私なりの手段なの。
宏光さん。
本当は近くにいたかったけれども、それは叶わないから、遠くであなたが頑張っていることを祈っています。
愛しています、だからこの秘密は墓場まで持っていきます―――。
END
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2021年9月11日 17時