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あれから私たちは大人しく家に帰り、私はしばらく謹慎生活を送り、渉は渡辺家の傍流の家に飛ばされた。
普段の世話はベテランのメイドがすることになって、送迎はベテランの運転手が担当になった。
まるで渉が最初から存在しなかったような雰囲気が作られていた。
渉は、渡辺のやってる事業の取引先のトップの娘と結婚するらしい。
多分渉に自由や人権はないけど、元気にやっているだろうか。
私はというと、許婚との結婚話が急ピッチに進んだ。
許婚さんは私よりも5つ上で既に家の事業で働いてらっしゃる。
彼とは3回ほどデートをした。
誰の目も気にせずに二人きりでデートをする。
渉とは叶わなかったことがあっさりと行われた。
1回目はただ出かけた。
2回目は帰り際にキスされた。
そして3回目はホテルに連れていかれた。
彼の顔が近づいてきたとき、私は突如涙が出てきた。
やっぱり私は渉が上書きされることが嫌だった。
「そんなに執事の男が好きだったの？」
彼の声の調子は冷ややかだった。
「一部じゃ有名だよ。渡辺家の当主の娘が執事と駆け落ちしたってね。俺はとんだ疵物を嫁にもらうんだと思ったけどね」
この言葉を聞いた瞬間、私の中の何かが砕け始める。
「でもどんな疵物でも渡辺家の血は俺の家にとって大事だからね。ありがたく思いなよ」
ボロボロと崩れていき、私の中の心の糸が、揺らされる頃にはプツンと切れた。
あのとき渉には幸せになると言ったけど、無理だった。
私はどうしても渉のことが好きで、渉も私のことをちゃんと見てくれて。
身も心も渉専用だと痛感して、今後一生私を疵物だと蔑む彼と世間では生きていけないと思ってしまった。
そう思ったら私は家業を司る本社のオフィスに来ていた。
父の会議中を狙って、秘書の人には一人にさせてと言えば社長室で一人になれた。
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作者名：ユタカ２ x他1人 | 作成日時：2021年9月11日 17時
