M 滅紫の地獄へ行く ページ25
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「本日より営業一課から異動してきました、宮田俊哉です」
「主任の戸山Aです。分からないことがあったら何でも訊いてね」
3年前、今の部署に異動してきたときのあの人の第一印象は綺麗な人、だった。
だけど彼女の左薬指に指輪があったから秘かにそう思うだけだった。
Aさんは仕事が出来て、でもそれを鼻にかけることはなく、いつも明るくて優しい、そんな人だった。
部署の華といった感じで、彼女の7つ下の俺は憧れを持った。
でもただそれだけだった。
Aさんの旦那さんは3年前からアメリカで単身赴任しているという。
会えるのは年に2回らしく、寂しくないんですか?と一回訊いたら、寂しくないと言ったら嘘になるかなという返答だった。
その表情にドキリとしなかったと言ったら、嘘になる。
でも本当にそれだけ。
そんな上司と部下の関係が一変したのは1年半ほど前。
当時俺には付き合っていると思っていた彼女がいた。
でも彼女にとって俺はセカンドだったらしく、本命の彼と結婚してしまった。
元々結婚願望は薄かったし、なんて女だという感情で平然としようと思ったけれど、どうにも仕事に集中できなくて、普段じゃしないようなミスをした。
そんな俺を見かねてか、Aさんが。
「宮田くん、今日飲みにいこうか」
「……はい」
会社での飲み会では一緒に飲んだことがあったが、二人きりは初めてだった。
色々な気持ちがごちゃ混ぜになって酒がいつもより進んだ。
「宮田くん思ってること全部吐き出していいよ」
俺はAさんに全部吐き出した。
いつも本音を笑って隠してしまうのに彼女には全部言えた。
「宮田くんは偉いね」
「偉いですか?俺」
「うん」
Aさんにポンポンと背中を撫でられる。
俺はこの人にただただ肯定して欲しかったのかなと思った。
「世の女性が皆主任みたいな人だったら良かったのに」
思わず漏れた本音にもAさんは微笑むだけだった。
酒の力のせいか、Aさんがいつもよりもっと魅力的に見えた。
適度なメイク、綺麗な顔立ち、長い睫毛、魅惑的な唇、スタイルも良くて手足も長い、細い指、整えられた指先、全部が魅力的に見えて、俺はグラグラときてしまった。
アルコールのせいで理性はあまり働きかけてこなかった。
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2021年9月11日 17時