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「横尾家も代々うちに仕えてきた。その主従関係は未来永劫変わらない。渡辺と横尾の人間が結ばれることでのメリットはどこにもないからな」
Aを見れば悔しそうに唇を噛んでいた。
何とかしてやりたいのにできないのがもどかしい。
「A、今のお前に何が出来る。親の金で大学に通わせてもらってる20歳の小娘じゃないか。夢を見るのも大概にしろ」
こう言って旦那様は溜め息をついた。
「今日をもって渉はAに付くのは終了。しばらくは別宅で謹慎してろ。縁談はこちらが勝手に進めといてやる。Aもしばらく外出禁止。メイドの誰かを付ける。あとは……西原家に連絡を入れておこうか」
「お父様!」
Aが叫ぶと旦那様は睨みをきかす。
「……かしこまりました」
俺はこう言うしかない。
感情は大きな力の前では無力だ。
「渉……」
俺はAの顔の方を向いて首を横に振る。
バレた時点で駄目になるんだよ、俺たちは。
部屋を出ていこうとするとAに腕を掴まれる。
「渉、待ってよ」
「A、いい加減になさい」
「納得なんて出来ないよ!渉はお父様なんかよりずっと私のことを真摯に見てくれたもん。……20歳の小娘にだって出来ることはある!」
するとAは俺の腕を引っ張って駆けだした。
ここを出る気だと察した。
「A、ちょっと待って」
「こんな家出ていってやる!確かに私は渡辺の人間だけど、自分の人生ぐらい、自分で決めたい」
「…………」
俺は横尾の人間だから、この運命に抗えないと思ってた。
だけど、だけど。
「A、行くか」
「……うん!」
彼女の手を握り直し、俺が連れ出す形になる。
旦那様は多分初動が遅れてるから使用人を手配している間に屋敷を出られた。
普段使っている車に乗り込んで敷地を出た。
多分今頃お屋敷内は大騒ぎのはず。
「……渉」
「ん?」
「この後どうする?」
「逃げられるだけ逃げよう」
スピード違反ギリギリの速度で車を走らせる。
隣の市まで向かってレンタカーに切り換えた。
黒塗りの高級車は目立つから乗り捨てる。
とにかく走れるだけ走り続ける。
俺の人生は俺だけのもの。
勢いで始めた逃避行でも、切り開いた感覚がして爽快だった。
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2021年9月11日 17時