y 赤朽葉の永遠はどこにあるのだろう ページ39
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懐中時計を見て時間を確認し、部屋のドアを開ける。
広い部屋の中心を占める天蓋付きのベッドの主は時間だというのに、まだ眠っていた。
「お嬢様。起床のお時間でございます。大学に遅刻しますよ」
俺が付いている渡辺家の御令嬢、Aお嬢様を起こす。
だけど朝が弱いAは。
「目が開かなーい」
「昨夜は何時にご就寝されました?」
「12時は過ぎてた。風花とガールズトークしてた」
風花こと高倉風花というのは彼女の幼馴染。
俺も知ってる。
「起きて下さい」
「執事の渉に起こされたくない」
なるほどね、そういうことか。
ドアが閉まってるか確認して。
「しょうがねえな。……おはよう、A」
そう言ってキスをすれば、お姫様は目覚める。
「おはよう、渉」
彼女は起き上がって俺に抱き着く。
「執事モードの時で起きてくれよ。大学遅刻するぞ」
「この部屋にいるときぐらい彼氏でいてよ」
「これは職業病。すぐに着替えてダイニング。旦那様と奥様も待ってるぞ」
「はーい。着替え見ていいのに」
「馬鹿。減るわ」
俺は部屋を出て執事に戻る。
Aと俺は表向きは御令嬢とその執事。
だけどその裏は恋人同士だ。
俺の家は代々渡辺家に付いていて、俺も大学を卒業したあとは自動的に渡辺家の本家で日々働いている。
渡辺家は明治時代から続く裕福な由緒ある家だ。
Aは現在の当主の長女にあたる。
このお屋敷に来てからずっと俺はAに付いている。
俺が付き始めたときAはまだ13歳で、まだまだ子供っぽくて、生まれた頃から蝶や花よと育てられてたからわがままも多くて手を焼いた。
旦那様や奥様から多少なら厳しくしてもいいと言われたので、わりとAにはきつく叱ることだってあった。
子供の時は多少わがままでも可愛げがあるけど、大人になれば悪いところの方に目がいきがちだから。
最初は反抗してたAだけど、だんだん折れるようになってきて、高校に上がる頃には素直な女の子になっていった。
と同時にその頃から俺はAを一人の女性として見るようになってしまった。
俺の言うことを吸収して見る見る素敵な子になっていくAを、要は自分好みにしているわけだから惹かれない方がおかしい。
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2021年9月11日 17時