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「一ノ瀬さん。一ノ瀬さん」
ハッと目覚めたときにはもうどこかに到着していたらしく先生はシートベルトを外していた。
「ごめんなさい、寝ちゃって」
「バイトの後だから疲れてたんだよ。本当は少し前に着いてたんだけど気持ち良さそうに寝てたから」
「やだ寝顔見られた。涎垂らしてませんでしたか?」
「垂らしてた」
「えっ嘘」
「嘘だよ」
「もう、先生」
寝顔見られたのが恥ずかしかったけど、そういえば前保健室でも見られてたっけと思い出した。
ふと自分の腕時計を見たら23時45分ぐらいになっていた。
「そろそろ下りようか」
「はい」
車から下りると周りの景色がはっきりする。
どこかの公園のようだった。
すると先生が私の所に来て。
「少し歩くけど平気?」
「はい」
「足元暗くて転ぶと危ないから」
そう言って手を差し伸べてくれる。
「……ありがとうございます」
私はその手を取る。
先生って王子様なのかな。
手を繋いで駐車場から坂を上っていく。
どこかの山の展望台のようだ。
「ところでここどこなんですか?」
「俺の地元の近くの展望台。県でいうなら神奈川」
「へえ」
確かに展望台まで少し歩いた。
チラリと時計を見たら23時55分になっていた。
もうすぐ明日になるなとぼんやりと思った。
そうして展望台に着いた。
他に人は誰もいない。
目の前には夜景が広がっている。
街灯や家やビルの明かりが連なっていて、でもそれは華美ではなく温かさを感じる光だった。
夜空を見上げて目を凝らせば星が点々と見える。
少し欠けた月もあった。
「寒くない?」
「大丈夫です。……良い所ですね」
「だよね」
ここで私は一つの疑問をぶつけようと思った。
「先生。何で私をここへ連れてきたんですか?」
夜景から先生の方へ顔を向ける。
先生も私へ顔を向けた。
「……夜景の力を借りないと言えないことがあるから」
夜景の力を借りないと言えないこと。
それなら私も一つある。
学校ではどうしても言えなかったことだ。
「……宮田先生、私もう先生と生徒の関係が嫌です」
「……俺も嫌だなと思った」
先生の顔を見ればバチッと目が合った。
……魔法にまたかかる。
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ユキ(プロフ) - はじめまして。いつも楽しみに作品読ませていただいていました。途中ヤキモキしたけど、2人らしい終わり方で気持ちがほっこりしました。゚(゚´ω`゚)゚。もう2人にも仲良し6人組にも会えなくなるのが淋しいです涙 素敵なお話をありがとうございました! (2021年9月20日 12時) (レス) id: d4b3736ff0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2021年8月17日 9時