79 ページ30
・
「バイトお疲れ様」
「お待たせしてすみません」
「いいのいいの」
「それで連れていきたいところというのは……」
すると先生は車の助手席のドアを開けた。
「立ち話はなんだから、乗って」
「あっはい」
私は先生の車に乗り込んだ。
先生は私のドアを閉めて運転席に座る。
「シートベルト締めてね。はい出発進行」
そう言って先生はギアを変えてアクセルを踏んだ。
具体的な場所や目的が知らされないままに先生とドライブすることになってしまった。
というか先生の車も初めてだし助手席だしドギマギする。
「俺運転上手くないから気分悪くなったら言ってね」
「はい」
時刻は22時過ぎ。
当たり前だけど外は暗くて月も見える。
カーステレオはラジオが流れていて気まずくはならない。
「入学式っていつ?」
「4月の3日です。……というか先生、明日仕事ありますよね?」
今日は水曜日。
春休みとはいえ先生たちは出勤しているはずだ。
「うん。あるね。新年度だしね」
「じゃあ……」
「今日君を誘わなきゃいけなかったから」
通り過ぎていく街灯が運転する先生の横顔を照らす。
やっぱり綺麗な横顔で二重幅で、時折揺れる長い睫毛まで見てしまう。
ねえ、先生。
卒業して先生から会いに来てくれたわけだから、少しは期待してもいいんでしょうか。
車窓から見える景色はあっという間に知らない所になっていって、どこに行くのか分からない。
「バイトはどう?」
「楽しく過ごせてます。バイトリーダーはちょっと厳しいですけど店長は気さくですし、中学で友達だった子が同じバイトにいて」
「それは良かった。何で本屋?」
「少しでも多くの物に目を触れた方がいいかなと思いまして」
「あの頃の君に比べたら随分と健全になったね」
「自分でもそう思ってるんですから言わないで下さい」
「ごめんごめん」
やっぱり先生と話していると楽しい。
宮田先生がいたから頑張れたし、先生がいなくてもこれからも頑張れると思うけど、やっぱり先生の傍にいたいと思ってしまう。
ラジオは芸人さんがパーソナリティのようなのでリスナーさんと軽快なやり取りをしていて、時折先生と笑い合う。
それが耳に心地良く、また先生の安全運転も揺れがほど良くて、バイトの疲れもあって私は途中で眠ってしまっていた。
・
53人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユキ(プロフ) - はじめまして。いつも楽しみに作品読ませていただいていました。途中ヤキモキしたけど、2人らしい終わり方で気持ちがほっこりしました。゚(゚´ω`゚)゚。もう2人にも仲良し6人組にも会えなくなるのが淋しいです涙 素敵なお話をありがとうございました! (2021年9月20日 12時) (レス) id: d4b3736ff0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユタカ2 | 作成日時:2021年8月17日 9時