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それもそうだ。
横尾さんぐらい優秀で内通者ならば私のように怪しむ人が出ないようにそれらしく振る舞ってもいいものだろう。
「でもこの活動も内通のような」
「今回は俺からだけど大概は太輔や俊くんとかから要請があって俺が情報提供するって感じだから」
「それだったら……あるかもですね」
それも問題あるとは思うけど目をつぶろう。
なんだか感覚が麻痺してきたぞ。
「さすが横尾さんの後輩さん。目の付け所が良いですね」
「ああ。うちの課では勘も良いし頼りになるよ」
そういうふうに思って下さったんだと新鮮に感じた。
「では内田さん」
「はい」
藤ヶ谷さんは念を押すような口調だった。
「今回ご協力いただいてもよろしいですか?」
「はい。一緒に窃盗団を捕まえましょう」
「ありがとうございます。じゃあ渉と内田さんは警察内部を、俊くんはいつも通り調べて」
「了解」
「分かりました」
横尾さんの思わぬ面を知ってしまったし、思わぬ協力体制になっちゃったけど、ひとまずは犯人逮捕が大事だもんねと私は一つ心に決めた。
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私と横尾さんは翌日一緒にこの事件を一から洗おうということになった。
課の部屋では誰かに聞かれる恐れがあるため、署内の普段人が立ち入らない資料庫の中で話し合うことになった。
「手慣れてますね」
「一人で調べる時とか太輔たちに電話するときに丁度良いの」
「じゃあ横尾さんを探すときはここに行けばいいんですね」
「内田だけだぞ」
それはなんだか特別感があってくすぐったい気持ちになった。
「最初は1ヶ月前、宝石店が狙われた。営業時間終了後、白い仮面を被った黒づくめの6人が店を襲来。バールのような物でガラスを割っていき宝石を盗んでいった」
「次は3日後。高級ブランド店に営業時間終了後に。どれも似たような手口なんですよね」
「不規則なのは犯行の間隔か。3日後だったり2日後だったり」
「連日ではないんですね」
「色々処理があるかもしれない」
「盗んだ物はどうしてるんでしょうね。換金してるならそういう業者も叩けるかもしれませんね」
丁々発止のやり取り。
正直な話、私は別に横尾さんのことを嫌いじゃないし、面倒くさいと思ったことはない。
こうして仕事の時は一番気が合うと思ってる。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2024年3月17日 11時