終わんない日々の螺旋 何処まで昇ろうが踊り場はない ページ15
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出社すると社内は騒然となっていた。
「何かあったんですか?」
「社長と連絡が取れないのよ」
「えっ?」
「今朝社長の運転手が社長の家に迎えに行ったらもぬけの殻だったみたいで、他の家族は海外に行かれてるみたいだから無事が確認できたんだけど……」
「社長だけが行方が分からないんですか」
「そうなの」
社長の秘書をしている先輩は溜め息を零した。
私はとある企業で重役秘書として働いている。
社長秘書は先輩が主にしているので深く関わりがあるわけじゃないが、やはり社長が心配だ。
「これじゃ先の見通しが立たないから関係各所に連絡するの手伝って」
「はい。重役たちは?」
「今副社長を始めとして警察に向かってる」
私はこの時ある人の顔が頭に思い浮かんだ。
その人はうちと取引している企業の社長秘書をしている。
その企業との会談は近々なかったが、一応耳に入れとく必要はあるだろうか。
そう思いながらもアポイントのある企業へ優先的に連絡をしたのでその人に連絡したのは昼休みの頃になってしまった。
ちなみにその人、藤ヶ谷さんはとてもかっこ良く、私から連絡先を交換して下さいと申し出た。
藤ヶ谷さんは快く応じてくれた。
でもそれだけ。
藤ヶ谷さんは何だかお忙しいみたいだし。
「もしもし、藤ヶ谷さん?」
「柴原さん、お久しぶりです」
「今大丈夫ですか?」
「はい。今日は有給取って休みなので」
じゃあ社長のことは耳に入ってないなと考える。
「あのですね、一応藤ヶ谷さんの耳にも入れておくべきだなと思いまして」
「……はい」
「弊社の社長が行方不明になってるんです」
「えっ?」
「今はその対応に追われてまして、御社との取引もどうなるか……」
「……そうなんですか。教えて下さりありがとうございます」
「では、失礼しま……」
「あの、柴原さん」
切ろうとしたら呼び止められる。
「僕の方からもその件、少し探らせて下さい」
「それは構わないと思いますが……」
せっかくの有給のはずなのにそちらの社長さんにも話をするのかな、申し訳ないなと思った。
藤ヶ谷さんは今度はこちらからご連絡しますと言って電話は終了した。
社長失踪のニュースは全国ニュースにも取り上げられるほどだった。
重役たちは皆疲れた顔をして会社に戻ってきた。
警察に関与してないか、こってり絞られたらしい。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2024年3月17日 11時