Drasticな世界さえ ページ1
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隣の席の横尾さんが戻ってきた。
「横尾さんどこ行ってたんですか」
「野暮用で」
この方は私の先輩である横尾渉さん。
警察は二人一組で行動するのが基本で、私は横尾さんと組んでいるのだが、この人は単独行動が多い。
なのに検挙率が高くて優秀なので、課長は手に負えないとぼやいている。
うちの課は主に窃盗事件を担当している。
横尾さんはうちのエースを担っていいはずだが、以上のようなことでやや邪険に扱われていて、私がなぜか連絡係になっている。
「横尾さん」
「何?」
「またあいつらが出るかもしれないから厳重警戒しておけって課長が言ってましたよ」
「分かってるよ」
あいつらというのは今私たちが追っている窃盗団だ。
6人組で構成されていて、神出鬼没、現れたときは白い仮面をつけているので素性が未だに分かっていない。
都内の高級品を扱う店を深夜に襲っては奪っていくということが幾度となく繰り返されている。
「いい加減捕まえとかないとな」
「警察の威信に関わりますもんね」
「それよりも……いや、何でもない」
この横尾さんは謎が多い。
いつの間にか事件を見つけては解決している。
トレカの窃盗犯や有名アーティストの絵を盗んだ犯人などが記憶に新しい。
他にもうちの課とは関係ない犯罪者も実は横尾さんが捕まえているらしいという噂はずっとある。
これも噂だけど上層部の人間に気に入られているから飛ばされずに済んでいるって話もある。
とにもかくにも謎な人だ。
そんなことを考えていたら電話が鳴り響いた。
課長が取る。
課長の緊迫としたら口調から例の窃盗団が出たことが分かる。
「皆、例の窃盗団がまた盗んでいった。丸の内の高級時計店だ。急いで出動して包囲網を張れ!」
課長の号令に皆立ち上がり部屋を出ていくが、横尾さんだけ微動だにしない。
課長はもう諦めていて何も言ってこない。
「横尾さんも行きましょうよ」
「そんなに大人数で行ったってしょうがないだろ。もう逃げてるだろうし。データだけ送っといて」
「分かりましたよ」
横尾さんは現場に行くことがあまりない。
刑事なのに安楽椅子探偵みたいだ。
横尾さんを置いて私は現場へ。
高級時計店はケースやドアが割られてガラスが飛び散っている。
犯行は営業時間終了後に行われたという。
防犯カメラを見せてもらったらやはり例の6人組が映っていた。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2024年3月17日 11時