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まずは弘子さんのお宅付近から。
主のいない家は当然ひっそりとしていた。
「武藤さんにお子様は?」
「いない」
「そっか」
そういったところもマウントの材料にはなりそう。
家族の形って色々あってしかるべきなのにね。
「武藤さんならいらっしゃいませんよ」
どこに声をかけようかと思ってたところで声をかけられた。
2人が警察手帳を見せる。
「武藤さんのご近所の方ですか?」
「はい、そうですけど……」
「お名前は?」
「里見と申します」
「里見さんですね」
「やっぱり武藤さんが……」
「いえ、我々は様々な可能性があると考えております」
「そうですか……」
「つきましては、普段の武藤さんのご様子を伺ってもよろしいですか?」
「武藤さんは慎ましく生活されてましたよ。私たちには挨拶して下さいますし」
「池江さんとトラブルとかはありましたか?」
「これといって……。池江さんは陰口叩かれてましたけど」
「池江さんに対して思うことは?」
「それはありますよ。この一帯の女王様ですから」
里見さんはどうやら相当思うところがありそうだ。
「女王様」
「ご自身がバリキャリで旦那さんも重役クラスで家も広くてとマウント取る要素がたくさんでしたからね」
「そうでしたか……」
その後も悪口のオンパレード。
一応泰絵さん亡くなってるんだよな……と思いながら話を聞いた。
「うーん……ご近所トラブル?」
「かもなあ。相当威張ってたみたいだし」
「うちの地域はうちの母が威張ってたなあ」
「叔母さん気強いもんな」
「伯母さんもあれは裏ボスだね」
「いつまでガキみたいなことしてるんだか。狭い世界でカースト作ってトップに立ったって所詮井の中の蛙なのに」
ガヤさんは吐き捨てる。
この事件めちゃくちゃ下らない可能性がある。
続いて別のご近所さんに聞いても同様の答えだったので池江泰絵さんがこの一帯の女王様であったことは確定的だろう。
「というか女王のフレーズってやだな」
「自分を想起させるから?」
「言っているのはあなたたちですけどね」
「うちの女王様は悪を成敗するときだけじゃん。普段はとても良い子」
「俺は言ってないよ」
「そうね。Aは俊だけのお姫様だもんね」
いつの間にかいつものからかうガヤさんに戻ってる。
照れるからやめてほしい。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2024年2月14日 15時