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それを呆気に取られながら見る私たち。
二人は振り向き、俊くんはアイドルばりのウインクをした。
「資料も零課に送ってくれるってさ。ひとまずは情報収集だね」
「まずは池江さんの家だな」
ここは郊外にある住宅街。
似たような建売住宅が立ち並ぶ。
普段は多分池江さんが威張れるぐらいには平和な集落だったんだろうなと想像できる。
池江さんのお宅に訪いを告げれば男性が現れた。
理由あって担当が変わったとガヤさんが告げれば悲しそうな顔をして。
「早く妻を殺した犯人が捕まれば誰でもいいです」
と言った。
ということはこの人が旦那様。
「ご主人ですね」
「はい。夫の一平です。……どうぞ中へ」
4人でお邪魔する。
家の中は淀んでいた。
お子さんは多分ご実家に預けているのだろう。
「申し訳ありませんが、事件当日の状況を教えて下さい」
「当日は……子供を妻の実家に預けて互い仕事帰りに待ち合わせて出かけようと計画してたんです。でも妻と連絡が取れなくなって、警察にも相談したんですが……」
「早朝に近くの公園で発見されたということですね」
「はい……」
何だろう。
何かがおかしいし違和感を覚える。
「……武藤さんがやったんでしょう?」
「何を根拠におっしゃってるんですか?」
ガヤさんの口調が少し強くなった。
「妻と武藤さんは仲が悪かったんですよ。些細なことで揉めて妻は困ってました。元警察官だかなんだか知りませんけど、細かいんですよ」
これは大きな食い違いだ。
どっちが嘘をついている?
でもこういうのって受け取り方の問題でもあるし……。
「それに妻の職場と武蔵さんの職場は近いんですよ」
「女性一人で現場まで運んだっていうんですか?」
「じゃあ共犯者がいるはずだ。しっかり調べてくれ」
この人はどっちだ?と考える。
妻を殺された悲しみゆえに被害妄想が強くなっているのか、はたまた……。
「分かりました。しっかり調べていきます。それでは失礼します」
ガヤさんが切り上げたので私たちも立ち上がる。
ガヤさんの表情には余裕がなかった。
すると外に出て俊くんが。
「ガヤさん」
諭すような声だった。
「何」
「今のガヤさんじゃ見えるものだって見えないし、聞こえるものだって聞こえないよ」
「俺は冷静だよ」
「どこが。弘子さんを犯人扱いされて腸煮えくり返ってるくせに」
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2024年2月14日 15時