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「安倍さんも面識はあるんですよね?」
「うん。凛子を介してなんだけど。だからそこまでの情報は……ちょっと待ってよ。私たまたま愛里ちゃんを見たことがあって」
「ほお」
「彼女デート中で、へえと思って見てたらおっさんがいきなり2人の前に現れて、どういうことを言ったのか分からなかったんだけど怒鳴り声が聞こえて。彼氏さんが追っ払っておっさんが逃げていったんだけど……これ関係あるかしら」
「事件に繋がるかもしれません。世間って狭いですから」
今のところはこんなものだろうか。
とりあえずネタは引っ張り出した。
追加で訊きたいことができたらまた連絡すればいい。
「お話ありがとうございました。もしまた訊きたいことが発生すればご連絡するかもしれませんが……」
「はい、分かりました……」
「お時間があるようでしたら、喫茶店でゆっくりして下さい。マスターのコーヒーや紅茶は絶品です」
「じゃあお言葉に甘えて……」
桑田さんは事務所を出た。
安倍さんも出るかと思いきや座ったままだった。
「矢作さんっていくつ?」
「千ちゃんと学年違いの同い年です」
「ということは私の1つ下?落ち着きすぎじゃない?」
「そうですか?」
「というかAちゃんって呼んでいい?私ずっと話してみたかったんだよね」
「はい、大丈夫です」
前にも言ったと思うけど同性からこういうふうに言われることが少ないので少し戸惑ってしまう。
仲良くなってしまえば普通にできるんだけど。
「Aちゃんはどうしてここへ?宮田さんのいとこさんってことは聞いてるんだけど」
「私前の職場を不当に辞めさせられて……。しばらく無職だったところで俊くんが声をかけてくれてみっくんにスカウトされてって感じです」
「そうだったんだ。高嗣も千ちゃんもAは凄いって口を揃えて言うもんだからどんな子なんだろうって気になってて」
「照れますね」
「それでAちゃん的にこの事件はどういうふうに見えてる?」
「まだ何とも……。でも組織が絡んできそうな気がします」
「そう。……気を付けてね、Aちゃん」
「はい」
安倍さんも事務所を出ていった。
私はメモ帳に伝えるべきことをまとめた。
皆がグランシャリオに集まったのは夜だった。
閉店後の喫茶店でテーブルを囲む。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2024年2月14日 15時