いつだって足りない Must be a lie 大抵は贋作 ページ39
・
「じいさんの家を整理しなくちゃいけなくて、もし価値のある物があれば売っちゃいたんだけど、Aの友達にそういうの詳しい子がいたわよね？」
母と電話しているとき、そろそろ切ろうかと思っていたらこんなことを言われた。
私の母の家は少し複雑だ。
母が高校を卒業する頃に私の祖父と祖母は離婚。
じいさんというのは私の実の祖父のことを指す。
その後祖母は再婚。
なので私には祖父が二人いることになる。
「そのじいさんが最近亡くなったみたいで、血縁関係があって生きてるの私しかいなかったみたいで、連絡があって。代わりにあんたが調べてくれない？」
その友達ならとても心当たりがあった。
というか一緒に仕事してる。
私はそれを引き受けてすぐに彼に連絡した。
じゃあ明後日行くかとなった。
当日の朝、待ち合わせ場所には既に彼、二階堂高嗣、あだ名はニカ、はいた。
「おはよう」
「おはよう。職質されなかった？」
「そんなに毎回されないよ」
ニカは本人は至って普通にしているのに職質されたことが何度かある。
その度にビビってるのが記憶に残っている。
「じゃあ西谷のおじいさんの家に行くか」
「うん」
ニカとの出会いは中学1年の時にまで遡る。
最初の席が隣同士で自然と意気投合した。
中学高校が一緒で、大学は別々になったけど交流は続いた。
そして今は一緒に仕事をしている。
始まりは2年前、私が就職した企業がブラックで、過労で体調を崩した。
そのときニカが連絡をくれて、俺の所で自由に働かない？と声をかけてくれた。
ニカは鑑定士として働きながら、フリーで防犯アドバイザーとしても活動している。
給料はたんまり出すからスケジュール調整や事務処理をしてくれとお願いされた。
私は自由に働けるならとニカと一緒に仕事をすることを選んだ。
そんなニカには少し謎がある。
何で今の仕事をしてるのかはいくら訊いても教えてくれないし、突然スケジュールを調整してくれと言われ、訳を訊いても急用だとしか言わない。
たまにものすごく疲れてそうなときがある。
恐らく私に知られたくないことがあるのだろうと思うけど、私もそこまで深くは触れない。
ずっと丁度良い距離感でいるのが私とニカだ。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユタカ２ x他1人 | 作成日時：2023年12月17日 11時
