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色々疑問はあるけれど第一の疑問はこれだった。
「北村さん」
「はい……」
藤ヶ谷さんの視線に私は背筋を伸ばす。
「取り返したいものあるんじゃありませんか?」
「えっ……」
私は唖然となった。
まさに私の悩みだったからだ。
「どうしてそれを……」
「少し調べ物をしてたら北村さんの名前が出て、そしたら玉が事務所の後輩だというものですから、玉からお声がけした次第です」
宮田さんから説明される。
「話していただけますか?あなたの力になれるかもしれません」
この方たちは一体何者なのか?
全然分からないけど、ここは玉森さんに免じて、私は藤ヶ谷さんの問いに答える。
「私の家はこう言うのもなんですが、裕福でした。両親が立ち上げた事業は急成長して膨大な富を築き上げました」
懐かしい景色を思い出す。
父がいて母がいて私はとても恵まれていた。
「だけど私が11歳の時、両親は海外出張に出ていてその帰り、飛行機事故に遭い亡くなりました」
「それからは?」
「それからは父方の祖父母が私を引き取り育ててくれました。両親の遺産は弁護士さんが管理してくれました。それだったら問題なかったのですが……」
私の膝に置いてあった手が自然と拳を作ってた。
そんな私を玉森さんは覗き見る。
「Aちゃんっていつから芸能界にいるっけ?」
「16歳からです。原宿に遊びに行ったときに事務所の方からスカウトされて」
「今はもちろん自分で管理してるだろうけど、その時は稼ぎどうしてた?」
「祖父母からは私が稼いだものは私の自由に使いなさいって……」
玉森さんの質問の意図が分かったような気がした。
「話の筋を戻しましょうか。ご両親の遺産どうなっていましたか?」
「3ヶ月ほど前、とあるブランドのパーティーの招待を受けまして。そのブランドは母の好きなブランドでした。コレクションしてたことを思い出して私は祖父母に話しました。すると2人からとっくにそんなものはないと言われてしまって……」
あのときのことは今でも色濃く記憶に残ってる。
その遺産で祖父母は羽振りの良い生活をしていたのだ。
「今更になって言わないでくれと言われました。二人を信頼し成人してもそのままにしていた平和ボケの私が悪いんだと思います。でも跡形もないというのはさすがに……」
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2023年12月17日 11時