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「あなた、お名前は?」
「高塚Aと申します」
「高塚さんね。宮田さんの仕事先の方?といってもこの人色々な所に顔出してるからなあ」
「こちら名刺です」
私は自分の名刺を玉森さんに差し出した。
「あーこの会社さん知ってます。宮田さんがこちらの会社さんのカードで遊んでるから」
「ありがとうございます」
「で、宮田さん。この方をここに連れてきたってことは仕事ってわけっしょ?」
「うん、仕事」
仕事?
クエスチョンマークが頭の中で広がっていく中、宮田さんは口を開いた。
「近頃トレカの窃盗があちこちで起こってますよね」
「はい……」
最近カードショップでうちの会社が作ったトレカばかりが狙われる事件が発生していて、それはイベントの時にも及び、参加者のカードが紛失するということも起きているのだ。
「狙われているのはどれもレアなカードばかりで」
「転売されたりしてるの?」
「だと思います。でも自分のものだという証明はできにくいので……」
「で、あなたも被害に遭われた」
「えっどうしてそれを。誰にも言ってないんですが……」
玉森さんの指摘にびっくりしてしまう。
「顔に書いてありますよ。あなたはコンテンツを愛している心優しき人だと推察できますが、業界だけがとなってもそこまで沈んだ顔はしないでしょう。と考えたまでです」
玉森さんは今まで画面の向こうでしか見たことなかったけど、話しやすい。
一方で鋭すぎる方だなと感じる。
「はい、そうです……」
そしてレアカードの名を出せば宮田さんは目を丸くした。
「それって、僕もまだ自引きしてないやつですよ」
「はい、自引きすることができて大切にしてたんですが、先週開催されたイベントの後からどこを探してもないんです」
「そういうのってコネでもらえるんじゃ」
「何言ってんの。自分で引くからこそ価値があるんだよ」
「そうですよ」
思わず一緒に反撃してしまった。
得がしたくてこの業界に入ったわけじゃありませんから。
「まあ……そうだよね。ごめん」
「で、高塚さんここからが本題なんですけど」
「はい」
宮田さんの目が真っ直ぐと私に向けられる。
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2023年12月17日 11時