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「俺何か持ってるわけじゃないからあそこの会員じゃないけどね。あそこのお偉いさんと仲良くさせてもらってるんだよ。昔からね。今回の件にあたり、杉山のことを調べてたら16年前の件を教えてくれてね。『宮田』の血が流れる子供に手を出すなんて無謀なことをしたもんだね」
「だから私や宮田俊哉のことを知ってたんですね」
「ああ。調べたら宮田は刑事になってて、あなたは探偵になっててまんまと俺の計画に乗ってくれて感謝ですわ」
殺しが誰にとっても所縁のないところで行われたのはこのせいだったってことはよく分かった。
あくまで私と俊くんを誘き出すためだけだった。
なんて傍迷惑なと思う。
東京で殺しがなきゃ零課が関わることはないはずだから、俊くんだって憎悪を表に出さず、私だって過去のことを知ることもなかったのに。
だけど一方で感謝もしている。
今回の件で俊くんとより話せて仲良くなれたと思うから。
約束もできたしね。
私は試しに森の心が見えないか顔を見た。
……なるほどね。
「森さんは復讐指南がメインなんですか?」
「いやいや、それはあくまで裏稼業。怪しまれないようにちまちま探偵をしてますよ」
ということは脱税でも引っ張ろうと思えばできるんだな。
まあここは愛想良く。
「猪熊さん福岡在住じゃないですか。そういう人どうやって見つけるんですか?」
「何、簡単ですよ。未解決事件やトラブルの当事者を見つけて声をかけるだけです。憎しみは簡単に消えませんからね」
「へえ」
「それにしても惜しいことをしましたよ。先にあなたたちのことを知ってれば先に声をかけたのに」
「それはどうでしょうかね。私や宮田は自分の手を汚してまであの人自身を恨んでませんでしたから」
「憎しみを増幅させるのは簡単ですよ。ありもしない未来を渇望させるんです」
「猪熊さんの場合は今も息子さんは生きていたらという世界線を想像させるんですね」
「その通り。矢作さんにはありませんか?そういう未来」
「ありませんね。今が楽しいので」
そんな反実仮想をしたって無意味じゃんって正論言ってもスルーされるんだろうなと考える。
「で、あなたが計画したと。宮城の杉山さんを攫って、わざわざ東京まで運んで殺してって随分と手をかけてるんですね」
「あなたも調査が大変だったでしょ」
「ええ。全国に行って大変でした」
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年11月22日 15時