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Side M
その瞬間俺の背筋に寒気が走った。
これがAのピンチであると俺は既に知っていた。
その頃俺とガヤさんは奥村を探していた。
玉に調べてもらって追ってるけど捕まえられていなかった。
「俊、どうした?」
ガヤさんが俺の様子に気付いて車を端に止める。
「……Aが危ない」
「またテレパシー?……ちょっと北山さんに連絡するわ」
ガヤさんは北やんに電話をかける。
俺の脳裏には一つの閃きが降りてくる。
「もしもし藤ヶ谷?」
「あのさ、俊がAのピンチを感じ取ってるんだけど今どういう状況?」
「そちらは奥村をとっ捕まえてない?」
「残念ながら」
「俺は今、今回の依頼人の家に向かってる。Aによると奥村が依頼人の高級品を盗んだみたいなんだ」
「Aもそっちへ?」
「向かってるはずなんだけど……」
「……北やん、俺らの動きバレてない?」
「宮田もそう思う?」
「例えば小笹さんが自分の素行調査を依頼していることに気付く。『幸せの街』の人たちに調べてもらう。調べてるのがグランシャリオ探偵事務所だと分かる。俺たちのことは組織に知られてる。その中に元カノのAがいると奥村は知る。悪事をバラされたくない奥村の次の一手は……?」
考えるだけで震えてきた。
何でって?
もちろん怒りで。
「俊、Aの場所は?」
「まだ分からない。多分移動してる」
「とりあえず北山は依頼人の対応。場所が確定したら連絡する。あと総動員させて。俺たちの女王様のピンチだからね」
「ああ、頼むわ」
北やんとの電話を終えたガヤさんは一つ息を吐いて。
「あのさ、俊」
ガヤさんから真っ直ぐ視線を向けられる。
「もういい加減Aを自分だけの姫にしちゃえば」
「な、何言って」
「俺は聞こえるんだよ。俊の恋の声だってね。まあ聞こえなくても俊がAに甘々なのは火を見るより明らかだけどね」
「…………」
「A可愛いもんね。俺は妹みたいに思ってるけど他の奴らはどう思ってるのかな。他の男と楽しそうに話してるのを面白くなさそうに見てるんだったらさ、言いなよ。何に遠慮してるんだか知らないけど、このまま仲の良いいとこ同士の関係を続ける気?それってAと本気で向き合ってるって言えてる?」
ガヤさんからの尤もな指摘に俺はぐうの音も出なかった。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年11月22日 15時