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「ありがとう、玉。明日からはこいつをもっと調べるぞ」
「私は同級生から話を聞く」
「頼んだ」
というわけでまた翌日。
外回りと装って黒岩くんはやって来た。
他にお客さんがいたので事務所の方に案内する。
「矢作さん久しぶりだね」
「うん。久しぶり」
「矢作さん秘書やってたんじゃなかったっけ?今は探偵さん?」
「うん、そう」
黒岩くんとは元彼の友達という認識でそこまで親しかったわけじゃないので説明は簡略化した。
「で、奥村を調べてるんだ」
「うん。黒岩くん、あいつに何されたの?」
すると彼の目の色が変わった。
「あいつに騙された。良い儲け話があるって言われてさ」
「あー……」
よく聞く手口だった。
「投資話を持ち込まれてさ。今この会社が急成長してるからって。俺そういう知識なかったからさ、まんまと引っかかって」
「最初は配当をもらって、どんどん投資させてある程度奪い取ったらとんずらされた感じ?」
「矢作さん賢いな。そうなんだよ、ある時からあいつと連絡が取れなくなって、まんまとやられたと思った」
「誰かに相談した?」
「いや……」
この人もこの人でええ格好しいなんだなと感じた。
「駄目だよ。泣き寝入りしてあいつに良い思いをさせちゃ。それ十分詐欺事件で訴えることができるよ。ちゃんと証拠があれば」
にしたって人を騙す奥村は随分とひどいものだ。
「矢作さん冷静だね。何であいつと付き合ってたの?」
「何でだろう。告白さえたときは確かに印象は良かったからかな。でも浮気野郎だったから1年半ぐらいで振ったけど」
「矢作さん可愛くて一目置かれてたから隣に置いてみたかったのかな」
「私は物か。黒岩くんもそうだったじゃん。奥村もそうではあったけど……人気者と友達の俺、か」
黒岩くんは溜め息を零す。
「自分が情けないよ」
というかそんなに他人からの評価って大事?
中身が空っぽだったらただのハリボテじゃん。
「奥村の調査が終わったらどうするの?」
「ひとまず依頼人に報告。その後は依頼人次第。何だったら黒岩くんの件警察に話す?私いとこが刑事なの。もしかしたらどうにかできるかもだから」
「ありがとう。その時の口座があればいいかな」
「いいね」
黒岩くんからも話を聞いて思うことはあいつとんでもない、だった。
黒岩くんが帰っていった1人の事務所で私は思考回路を動かしていく。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年11月22日 15時