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Aは基本正直な子だ。
目を見てそれが嘘ではないことは分かっている。
「それでいいんじゃないかな？」
「えっ？」
「子供の時は学校とか俺たちなら組織の中とか限られたスペースの中で限られた人たちとの関係が全てみたいに思っちゃうじゃん？」
「だね」
「社会人になってもそりゃどうしても付き合わなきゃいけない人はいるけど、自分のいたい人は自分で選べるじゃん？」
「……そうだね」
普段街に住んでると忘れがちだけど、こうして山の上から見ると世界はどこまでも広いと感じる。
俺たちは多少の制限はあれど、どこにでも行けるし、どの道も選べるんだよ。
「俺は自分の仕事も付き合う人も選べて、それが楽しいと思えてる。Aは？」
するとAは立ち上がり、やっほーと叫んだ。
よく通る声が景色の中に溶けていく。
「俊くんたちはそうやってちゃんと選んでお互いが心地良くいられるように努力してるからずっといられるんだよね。私も皆とそうなれるようにしたいな」
くるりと俺の方を見て笑顔を見せる。
やっぱり俺は……。
「既にそうなってると思うけどね」
「いや、まだまだ。だからこれからも探偵助手を頑張るね」
「Aは既に探偵だって」
「いやいや、まだまだ」
そう言って笑うAの表情はもう陰りはなかった。
再び座るAに俺は問う。
「A、もう平気？」
「だいぶスッキリした。ありがとう、俊くん」
「どういたしまして」
Aの心からの笑顔が見られて本当に良かった。
Aが皆の中で笑ってくれてたらそれでいいんだから。
と思うと同時に……。
「俊くん？」
「ん？」
「私の顔に何かついてる？」
「ううん、いつもの可愛い顔」
「もうやめてよ」
ここで俺のことどう思ってる？って訊ければいいんだけどね。
Aは自分の心の声が全部聞かれてるって思ってるだろうけど、実は全部は聞いていない。
だって全部を聞くのは怖いから。
「そろそろ行く？」
「俊くんお腹すかない？私はすいてる」
「俺もすいてる。レストランあるし食べようか」
「こういうところのレストランって地の物を使ってるから良いよね」
「何食べようかな」
俺たちは立ち上がってレストランへ向かう。
一度振ってしまった手前、俺はどうしても臆病になってしまう。
犯罪者には容赦なく突っ込めるんだけどねと思いながら俺は隣のAを眺めた。
END
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作者名：ユタカ２ | 作成日時：2023年11月22日 15時
