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「私たち5人さ、1年のゼミで一緒になって、たまたま学びたいジャンルが一緒だったからで親しくするようになって。だから性格や趣味がバラバラで、だからこそ面白くて……と私は思ってた。でも色恋はどうしても関係にヒビが入るよね」
紗知は何でそれをという目をした。
「大学3年ぐらいの時か。紗知と付き合ってた人がしばらくして望美の彼氏になってたよね。紗知はその人のことがとても好きだった。でも彼が望美に乗り換えた。正直な話、その彼も彼だし望美も望美なんだけど、以降紗知は望美を恨むようになった」
「…………」
紗知はもう何も返さなくなった。
「その頃から微妙に望美への当たりが他3人とは違ったもんね。望美の全てがムカつくようになった。紗知は見事な上昇志向、望美は安定志向だもんね。その彼と望美があっさりと破局して、だからといって紗知とよりを戻すわけじゃなかったことも募らせる原因だったかな」
二人が何かを言ったわけじゃなかった。
だけど二人の心の声と少し他の同級生から聞いたことから考えた。
「社会人になってもまだ望美への憎悪は消えなかった。その頃望美は前谷と付き合い始めた。紗知は前谷に接触した。そのまま奪うことも考えたけど紗知は最悪なもう一工夫を施した。紗知は前谷を煽って束縛するように仕向けた。そして二人が破局した後は望美をストーキングするようにした。最終的には殺すように命令した」
段階に際しては前谷が自供したらしい。
俊くんとガヤさんが詰めたであろうことは想像に難くない。
「妄想も大概にして!」
「妄想じゃない。前谷も自供してるし」
「私の気持ちがAに分かるわけない」
「分かるよ」
私はこう言うしかなかった。
「分かるよ。……私は心の声が聞こえる人なの」
「……気持ち悪い」
紗知からは低い呟きが出る。
「どうりでね。合点がいったわ。Aっていつも俯瞰的に私たちのこと見てたもんね。かと思えば私たちに寄り添った言動をして。キャンパス内でも困ってる人を助けてたりとか。それで自己顕示欲を満たしてたんだ」
そう言われたらそういう見方もあるねとしか言えない。
「自己顕示欲ってそんな悪いこと?問題はその欲の出し方でしょ?紗知のやり方だって十分悪い自己顕示欲の満たし方だと思うけど」
「うるさいわね!」
逆上した紗知は紅茶を私にかけてきた。
喋ってる間に冷めて良かったと思う。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年11月22日 15時