* ページ25
・
私がその人を呼び出せたのは金曜日の夜だった。
彼女は仕事だと何だと言い訳をつけてきたから。
来てもらったのは喫茶店。
卑怯かもしれないけど自分のフィールドじゃないと負けちゃうかもしれないから。
喫茶店の空間は二人きりにさせてもらった。
ワッターに教えてもらって紅茶の準備はしてある。
事務所には皆がいる。
心を強く持て、A。
私には皆がいるんだから。
ドアの鈴が鳴る。
その人物がやって来た。
「この前から思ってたけどAはこの店の何?Aって探偵事務所で働いているんでしょ?」
「ここの扉の先に事務所があって探偵の仕事がないときは喫茶店の仕事をやってるの」
「へえ。打ち合わせに良さそう」
「来て来て」
私は紅茶を用意しながら非現実的な言葉を吐いた。
「どうぞ」
(まさか毒とか入ってないでしょうね)
「ありがとう」
「私が犯罪に手を染めるわけないじゃん。あんたじゃあるまいし、ねっ高橋紗和さん」
未だに信じたくないんだけど、紗知が裏で手を引いていたのだ。
「……は?」
(怖っ。心読んでるの?)
私は俊くんのように笑みを浮かべた。
「びっくりだよね、望美を殺すように仕向けるだなんて」
私は紅茶を一口飲んだ。
今日もワッターのお紅茶は美味しい。
「何言ってんの。望美は元彼に殺されたんでしょ」
「ノンノン。犯人の前谷のスマホを調べたところ、紗知とのやり取りが残っていたのでした」
(あのタコ。私との関わりを消しとけって言ったのに)
「甘いね、紗知。そんなの簡単に復元できるよ。私の仲間にネットの天才がいてね、解析してもらったの」
「何で警察はわざわざそうまでして調べたのよ。あんたがあのいとこに言ったの」
「いやいや私は何も。むしろ私は迷ってた側だった。うちの人たちは被害者も加害者も徹底的に調べるんですよ。俊くんは何か引っかかるところがあったから調べたんじゃないの」
「じゃあ何であんたは今私を」
「友達を疑うのは辛かったよ。でも一方で別の友達が殺されてるわけよ。その原因が友達だったとしたら許せなくない?私は自分の正義に従ってみただけ」
今だって十分迷ってる。
だけど紗知のしたことをはいそうですかと流す気持ちはなかった。
私は息を吐く。
ここからは私が聞いたものも取り合わせて話す。
でももう金輪際会わないつもりだから何だってやってやる。
・
36人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年11月22日 15時