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その日の深夜に前谷は逮捕された。
刑事組曰く、ストーキングがエスカレートしていった結果らしい。
前谷はあっさり認めたため警察の取調はあっさりしたものだったとか。
犯人も無事逮捕され通夜は私の予想通りの日にちに執り行われる。
望美のご家族が私たちにも来て欲しいとおっしゃってくれたので私たち4人は望美の元に集まった。
お母様が望美の顔を見せてくれた。
顔だけは傷一つなくて本当に良かったと思った。
通夜は終わり、4人で会場を出たところにいたのは。
「俊くん」
俊くんが喪服姿で立っていた。
来るなんて聞いてなくて驚く。
「えっ何で……」
「Aのお迎え。皆さんお久しぶりです」
「ご無沙汰してます」
普通だったらキュンキュンするところなんだろうけど、私の勘がただのお迎えじゃないことを告げていた。
事実俊くんの目は3人の顔を真っ直ぐ見ていた。
「俊くん車?」
「うん。少し先に止めてある。帰る?」
「うん……。じゃあね、皆。明日の告別式で」
「またね」
3人と別れ、私は俊くんについていく。
駐車してあった車に乗り込んだら俊くんは開口一番。
「A、聞こえないフリしてないよね」
やっぱりなと思った。
「してないよ」
「俺に嘘ついたって無駄だよ」
「…………」
俊くんが常々許せないのは犯罪行為。
今回の事件が終結するまで引き下がらない。
私だってそうだけど……。
「A、らしくない」
「だって」
泣きたくないのに泣きそうになる。
私だって正しくはいたいよ。
「事件を解決する上でもっとも邪魔なものは感情だ。そこで起こった事実は一つなんだよ。その事実から感情を優先して目を逸らすのは良くない。たとえ相手が誰であっても」
それは私もよく分かっている。
分かっているからこそなのに。
「俊くんは私やみっくんたちが犯罪行為に手を染めたとしても断罪できるの」
「できるよ。大切な人であっても良くないことをしてるんだから」
刑事としてのこの人はドライだ。
だからこそ悪魔だなんて言われてるんだろう。
「まあこれは刑事としての俺の考えね」
「俊くん自身は?」
こう尋ねたら俊くんの目の色が変わった。
温かいものに変わっていく。
「友達を亡くしてショックを受けてるAをさらに傷つけてしまうのは嫌だ」
そう言って俊くんの手が私の頭に伸びる。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年11月22日 15時