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結果から言うと望美は約束の時間に来なかった。
ラインを送っても未読のままで電話をしても繋がらなかった。
さすがの私も心配で落ち着かなかった。
そんな私をみっくんは見て。
「A、中辻さんの家分かるか?」
「前に年賀状送るときに訊いてて……あった」
私は彼女とのラインをすぐに遡った。
「すぐに行くぞ」
私はみっくんと一緒に望美の家へ向かった。
彼女の家はオートロックのないアパートだった。
「鍵開いてる……」
ドアノブを握ったときの手応えがなかった。
もう嫌な予感しかしなかった。
「A、俺がいるから」
「うん……」
みっくんに背中を押されドアを開ける。
玄関先には血だらけで倒れている望美の姿があって……。
「望美!」
私はそこからの記憶がなかった。
気を失っていたらしく気が付いたら車の中で、私は俊くんの膝に頭を乗せていた。
つまりは膝枕。
「えっ俊くんごめん……」
起き上がろうとするも俊くんに制された。
「Aはまだ大人しく寝てなさい」
「うん……」
状況が飲めない私に俊くんは優しい笑みを見せて優しい声で説明してくれる。
「多分Aが倒れたからかな、Aがピンチだと感じ取った直後に北やんから連絡をもらって、天然のGPSでここに来た。今はガヤさんと北やんが現場を調べてるよ」
「そう……」
俊くんの優しい声色でもう駄目だった。
俊くんの顔が見たいのに涙で滲む。
「A」
俊くんが腕を広げてくれるから。
「俊くん……」
その腕の中に飛び込んだ。
「俊くん……シャツとか、ネクタイとか、ごめん」
「そんなの気にしないで思う存分泣きなさい」
「うん、ありがとう……」
悲しいのと俊くんが温かいのとで私の涙は止まらなかった。
どのくらいそうしてたのか分からないぐらい泣いた。
「A、落ち着いた?」
「うん、ありがとう」
「Aの顔見たいな」
「やだ、泣き顔ブスだもん」
「そんなことないでしょ。どんなAだって可愛い」
その可愛いは私だけ?
でもたまにこの人皆に対しても言ってるの見るぞ。
しょうがないから顔を上げる。
私は体勢を立て直して俊くんと正対する。
「Aはどうしたい?」
俊くんは静かに今後を問う。
そんなの決まってるでしょ。
「望美を殺した奴を塀の中にぶち込んでやる!」
こう宣言すれば俊くんの目は垂れた。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年11月22日 15時