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私が喫茶店の方で仕事をしていたらニカちゃんから電話がかかってきた。
「もしもしニカちゃん?」
「単刀直入なんだけどさ、A俺たちの店手伝ってくれない?」
「ニカちゃんと千ちゃんの何でも屋さんを?」
2人は何でも屋『2s』を営んでいることはもちろん知っていたが、ここに来て4ヶ月、そっちには行ったことはなかった。
「そう。俺と千賀の他に店には手伝ってくれてる子がいるんだけど、そいつは本業が忙しくてさ」
ニカちゃんがそいつって呼ぶから近しい人間ではあるんだろうと思いつつ。
「そっちで雑用して欲しいの?」
「さすがA、察しが良い。俺と千賀は何でも屋の仕事に加えてそっちの仕事もやってるわけだからなかなか手が回らなくて」
「私は手伝いたいけど、みっくんには言った?」
私の雇用主はみっくんだから彼の許可が一応は必要だと思うから。
「大丈夫。既に話してある」
「それで私が断ってたら?」
「Aは断らないでしょ?」
「……まあね」
私は皆のお願いだったらホイホイ聞いちゃう。
特に俊くんだったら。
「じゃあ明日来ればいい?」
「うん。ありがとう。よろしく」
ニカちゃんは元気良く電話を切った。
ワッターがこちらを見る。
「あっちを手伝いにいくの?」
「みっくんとニカ千の間でそうなってた」
「明日Aいないのか」
残念そうにワッターは言う。
「うちの常連さんでAのファンがいるからさ」
「私は忙しいって言っておいて」
「Aはモテモテだな」
「うーん……」
父親似の顔は可愛いと言われる機会が多く、告白も何回もされているけれど、不特定多数に好かれてもなと思う。
「ごめんごめん。Aは俊くんにモテたらいいんだよね」
「うーん」
私の欲しい気持ちは一つで、それが叶いそうにないから微妙な反応しかできない。
俊くんは私のことどう思っているのだろう。
気にはなるが勇気がないので訊けない。
「まあニカ千によろしく」
「OK」
というわけで翌日私は『2s』を訪れた。
個人商店のような雰囲気でカラフルな外装が目を引く。
「こんにちはー」
「おうA」
「来てくれてありがとう」
中にはニカちゃんと千ちゃんともう一人女性がいた。
「あなたが矢作Aさん?」
「そうです」
私と同年代ぐらいかなと眺める。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時