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そういえば彼女は組織の幹部の愛人にさせられていたんだった。
だけど案外自立した生活を送られてるんだなと感じた。
でもそれが重くのしかかっているのは確か。
だって信根さんの望みは。
「じゃあお言葉に甘えて。査定額で皆で葵衣さんの所で食べにいきます」
「楽しみにしてます」
『シュネル』はというとオーナーシェフの武市は責任を取り辞任。
スーシェフの野中が昇格し、新装開店を目指すという。
「これで浄化されてクリアな店になれればと思います」
そう言って信根さんは朗らかに笑った。
ひとまずは彼女の不安要素がなくなって良かったと思った。
だけど……。
信根さんが紅茶を飲み終え立ち上がる。
別れの時だと感じ、空気が一気にしんみりになる。
「じゃあ葵衣、元気で」
「うん。渉さんも」
だけど二人の心の中は。
(葵衣、好きだよ)
(渉さんが好き。これからも)
たったの一つのしがらみが二人を絶たせる。
これを失くすためには。
「じゃあ俺が送るわ」
みっくんが信根さんを見送るため事務所を出る。
ワッターは溜め息をついた。
「ワッター」
ワッターは顔を上げる。
その目は心を読まなくても辛そうだと分かる。
「絶対『幸せの街』ぶっ潰そうよ」
「…………」
「それで売上3ヶ月分の指輪で信根さんにプロポーズしよう」
「……3ヶ月分ね」
ワッターはフッと笑った。
眼鏡の奥の瞳の色が変わる。
「ああ!絶対ぶっ潰す!」
きっとワッターなら、皆とだったら目的を果たせると思わせる目だった。
そして私はまた皆の一助になりたいという想いを強くした―――。
to be continued
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時