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中はシングルベッド、箪笥、押し入れという実にシンプルなもの。
ここのどこかに秘密があるのだろうか。
試しにベッドの下を見たら綺麗だった。
「俊くんだったらこの2択どっち?」
「俺の勘が押し入れって言っている」
そう言いながら俊くんは戸を開ける。
「それは経験則?」
「ちなみに俺は見られたくないものは学習机の引き出しに隠しておいた」
押し入れは衣装ケースが詰まっていた。
私は動画を回しながらそれを取り出す俊くんを手伝う。
「……あった」
俊くんはそう呟いてお菓子の缶を取り出した。
横に振れば鈍い音がした。
「開けるよ」
俊くんがおずおずと開ける。
「……包丁?」
そこにはタオルに包まれた包丁が入っていた。
しかもただのタオルじゃない。
血で黒ずんだタオルだった。
「……また調べなくちゃいけないことが増えたね」
「…………」
俊くんの感情を深く感じ取ってしまった。
俊くんの処世術は憎悪を隠せるから凄いと思うけど。
私は動画を切った。
マンツーマンじゃないと言えないことがある。
「俊くん、私はここにいるよ」
「A……」
「あのとき俊くんが助けてくれたから私は今こうして俊くんの目の前にいる」
俊くんの漏れ出る感情はありがたいことに私が主語だ。
だから私という存在を訴えるしかない。
「俺たちの姫は一枚上手だ」
俊くんの手がまた私の頭へ移動しようとした、そのとき。
「宮田さーん、矢作さーん」
加用さんの声が聞こえた。
「はーい、私たちはここでーす」
返事をして十数秒後、加用さんも来た。
「ここにいたんですね。県警に要請いたしました。……で、これは……」
「押し入れの中にありました。これも調べるようお願いします。杉山さんは何かの犯罪をした可能性があります」
「かしこまりました」
しばらくして県警の鑑識が来て杉山家に規制線が張られた。
俊くんと加用さんはそこに立ち会うというので私はレンタカーの中で待機することにした。
その時間を無駄にはしたくないので6人に会議の連絡をした。
すぐに連絡をくれたのはみっくんとガヤさんコンビだった。
テレビ電話にする。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時