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いつの間にか加用さんが戻ってきた。
つい二人の世界に入ってたことは否めない。
「まあそうですね」
「付き合ってるんですか?」
「残念ながら違うんです」
それをいつもと変わらない調子で言う俊くんに少し戸惑う。
俊くんのくれる甘さの種類がやっぱり分からない。
「それはそうと入れる所見つかりました。1階の窓なんですけど……」
「分かりました。行きましょう」
加用さんに案内された場所はどこかの部屋の窓だった。
ここだったら侵入できる。
いや警察の捜査だから合法だ。
そうして三人で入り込んだ家はものすごくひっそりとしていて空気が重かった。
「加用さんがもし殺したい人を別の場所で殺したいとき、どうやって連れ出しますか?」
俊くんはこう尋ねた。
「力ずく……ですかね」
加用さんは自信なさげに答える。
「Aは?」
「力ずくで杉山さんを気絶させて薬で眠らせて連れていく」
「それであれば?はい、加用さん」
「部屋の中が荒らされている」
「正解です。参りましょう」
この部屋は空き部屋のようで何もなかった。
私が犯人だとしたらどうやって真夜中に杉山さんを引っ張り出す?
そんな想像をしながら私が足を向けたのは台所だった。
「……やっぱり」
振り向いたら俊くん。
俊くんもそう考えるよね?
「うん。真夜中に入るとしたら店の出入口は考えづらい。だったら入るとしたら勝手口だ」
キッチンは瓶の欠片が散乱していた。
つまりは争った形跡だ。
「加用さん」
「はい!」
「県警の鑑識を要請してくれませんか?」
「分かりました!」
加用さんがドタバタと駆け出す。
私は台所を覗き見る。
「A危ないから入らないでね」
「分かってる」
食器棚を見れば扉のガラの部分にヒビが入ってる。
これも関係ありそうだ。
「杉山が襲われたのはここで間違いない。A、スマホで動画撮っておいてくれる?」
「うん。皆に見せるため?」
「そう。動画はいじらなきゃ証拠になるから」
私はスマホのカメラアプリを開き、動画を回す。
まずは台所をぐるっと撮る。
「Aは自分の秘密が物としてあるとしたらどこに隠す?」
「そんなの自分の部屋の家族が触らなさそうな所に決まってる」
「ここは杉山の生家だよね」
「2階に行こう」
私たちは階段を上る。
手当たり次第部屋を見て、杉山の自室であろう場所に踏み入れる。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時