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「この辺の子供たちには良いおじさんって認識だったと思いますよ。なのに独身だから皆不思議に思ってて」
「何で地元に帰られたかは聞いてませんか？」
「それは誰も知らないと思います。当時ご両親に訊いても息子が帰ってきたと実に嬉しそうな顔をして誰も突っ込めませんでした」
「となると噂するしかありませんね」
「……そうですね」
奥様は目を伏せた。
やはり杉山家は狭い集落の恰好の噂の的だったようだ。
「杉山さんはいつから店を閉められてますか？」
「その……所謂死亡推定時刻というのは……」
俊くんは手帳をめくる。
「遺体が発見されたのは昨日の夕方でした。遺体の状況から見るにその日の朝から昼にかけての時間に殺害されたということは分かっています」
「一昨日までは店を開いてたし杉山さんもいましたけどねえ」
また奥様から有力情報。
これである程度の道筋が出来る。
俊くんと目が合った。
(だいぶ見えてきたね。町のことはご婦人に訊くのが一番だね)
(まあ男の人は仕事やら行事やらでは前を行くだろうけど普段のコミュニケーションは女性の方がしてるよね)
「ご協力いただきありがとうございました。他の方にもお話を訊きたいですけどどなたは良いですかね？」
「そうですね……杉山さんのご近所の橋口さんや西山さんならより分かると思います」
「ありがとうございます。加用さん引き続きご案内お願いします」
「かしこまりました」
私たちは富田家を後にし、杉山さんのご近所へ向かうことにした。
「宮田さん事件解決できますか？」
道中加用さんがこう尋ねる。
「解決してみせます。調べてるのは僕と彼女だけじゃないので」
「正直な話、平和なこの集落から殺人事件ってワードが出てきて戸惑ってます」
「そうですよね。でもその気持ち大事にした方が良いですよ。僕は慣れてしまっている部分がありますけど、普通は殺人なんてあっちゃいけないことですし、ショックを受けたり傷ついてしまうのは当たり前です」
これを良い声と優しい声で言う俊くんが処世術だけで言ってるとは思えない。
実際俊くんは今回の件で動揺し、でもしっかり前を向いて解決しようとしている。
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作者名：ユタカ２ | 作成日時：2023年8月27日 10時
