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(本部が東京にあって、地方には札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、福岡にある)
(大企業みたいな支社の置き方。じゃあ杉山は何かの特殊能力があって、誰かに紹介されて仙台の施設で育ち、東京の施設で働き、一回福岡に飛ばされ、地元に帰ってきた?)
(大まかに言えばそうかな。その穴を埋めるか)
「じゃあこの集落の方にも話を伺いたいので加用さん紹介いただけますか?」
「お安い御用です」
加用さんは敬礼をした。
(本庁の人はやっぱかっこいいな。だけど宮田さんは物腰が柔らかくて良い人そうだ)
早速俊くん人を垂らしてる。
(人を人垂らしみたいに)
加用さんについていきながら心の会話になる。
(だってそうでしょ)
(そうかなあ。ぶっちゃけ処世術というか。この顔に生まれたことに感謝だね)
(俊くんも生まれてこの方ずっと他人の心の声が聞けちゃう生活だもんね)
(そういうAもじゃん。だから本来の自分って分からない)
なんかこの2日でだいぶ俊くんの本音が見えてきた。
素直に私に言ってくれる俊くんが良いや。
(私は私の見えてる俊くんが素敵でかっこいいと思ってるよ)
(A……)
俊くんの顔を見て笑ってみせれば微笑み返してくれる。
処世術だろうが何だろうが俊くんには笑顔が似合う。
「まずはこの集落の長からいきましょうか」
「あっはい、長ですか」
私たちは気を取り直して事件に向き合う。
「富田純正と言います。代々農家を営んでいて80近いんですが、元気で頭もしっかりしているので色々話していただけると思います」
「なるほど」
長の話は確かに聞きたい。
あとは近所の人の話や噂に敏感な口さのない人達の話も聞いてみたいものだ。
「こちらですね」
案内された家は確かに代々農家をやっている家という感じで門構えが違った。
「富田さんいいですか?」
加用さんは引き戸に向かって大声を出した。
そうか、こういう家はチャイムがないのか。
「あら加用さん。どうされましたか?」
しばらくして出てきたのはおばあさんだった。
「純正さんいらっしゃいますか?今東京から刑事さんがいらっしゃってて」
「杉山さんの事件で?」
「そうです。で、まずは杉山さんについて訊いて回ろうということですよね?宮田さん」
「はい。お時間はよろしいでしょうか?」
「……はい。どうぞ」
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時