* ページ40
・
「北やん、俺にちゃんと過去を清算するように仕向けてくれたのかな」
「それは私にとっても?」
「そうだね。覚えてないとはいえAも傷つけたわけだから」
「都合の良い脳で助かったよ。おかげで影響は軽微なものだし」
「いやいや、今だって男の人怖いでしょ?」
そう問う俊くんの眼差しは優しい。
そういう俊くんこそさ。
「囲まれるのは嫌だし自分から動けないだけで普段はそこまでじゃないから。俊くんはもちろん、あとの6人だって私は怖くはないよ」
皆基本優しいから私は皆に優しく包まれてるなと日々感じる。
だから私だって優しくありたい。
「皆優しいもんね。俺たまにAをあそこに連れてきて良かったのかなって思うんだけど。危険なことは多いし、俺たちの敵はAを傷つけた相手でもあるし」
「そんなこと」
「うん。見てれば分かる。Aは生き生きと犯人を追い詰めてるし、人に寄り添ってる姿は嘘じゃないし、皆はAのことを気に入ってくれてるし、これが正解だって思ってる」
「俊くん、ありがとう」
昨日から俊くんの本音が沢山聞けて嬉しい。
俊くんとは心で会話できるけど、言葉で話すのは大事だなと思う。
「俊くんがグランシャリオを紹介してくれてから毎日が楽しいもん。だからありがとう」
「どういたしまして」
新幹線の中、これから捜査だと思いつつも楽しいって思っちゃう。
「私に武術身に付けるように言ったのも今回のことから?」
「うん。俺がいれば俺が守ればいいけど、俺がいないときは護身した方がいいと思ったから」
「おかげで引かれるぐらい強くなっちゃった」
「戦うAはかっこいいからそれでいいの。でも無理はしないでね」
「はーい。ねえ俊くんは何で警察官になったの?」
「えっ?」
俊くんはなぜか視線を私から逸らした。
「あんなことがあってから、Aを守るにはどうすればいいだろうと考え続けた果てで……」
「で、今ではかっこいい刑事さんだ」
「俺なんてまだまだだよ」
少し俊くんは目を伏せた。
そういえば何で零課に島流しされたのか訊いてなかったな。
だけどそれを訊こうとした瞬間アナウンスが目的地の駅に到着することを告げたので話の流れが止まった。
駅に到着してからはレンタカー屋さんに寄って車を借りる。
俊くん曰く地元ナンバーの方が動きやすいらしい。
・
35人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時