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「この銃どうしたのさ」
俊くんが拾い上げた銃を見せながら訊く。
吉田はそっぽを向く。
そんなことしたって……。
「へえ、友道フィナンシャルの社員からもらったの?」
「だそうですよ、社長」
まだ座っている友道に社長が訊く。
「俺は知らん……」
俊くんは実ににっこりと目を細めて。
「……逃げたって無駄ですよ、ということはお伝えしておきます」
「とっくに調べはついてますから」
こういうときの刑事組マジで怖い。
いつもこういうふうにキレキレに犯人に迫ってるんだろうなと想像できる。
俊くんは他人の心の声が聞けるし、ガヤさんも聞こえる人だし。
思考を読まれた吉田は完全にびびってる。
まあそうだよね。
(こいつ心が読めるのか)
「ご想像にお任せします」
また俊くんはにっこり。
それもう答えよ。
「……じゃあ答え合わせといきましょうか。頼むよ、千賀」
みっくんはしゃがんで吉田と目線を合わせて言う。
これも効果ありそう。
そして千ちゃんが真っ直ぐ吉田を見下ろす。
「……この事件はそもそもあなたの依頼がおかしかった。だってあなたと玲奈さんは付き合ってもいないんだから。ですよね、玲奈さん。大丈夫ですか?」
「……はい、おかげさまで。……そうです、私はこの人と付き合っていません」
「証言ありがとうございます。あなたは一方的に彼女を好いていた。なのに周りには付き合ってると吹聴した。見事な外堀ですね。でも中身が伴わなければただのハリボテです。あなたは取引先であることを良い事に堀さんたちに様々な営業をかけた。それで損害を出した。でも伊坂さん及び勤務先にはそんなことはなかったかのように報告した。ですよね、伊坂さん」
「はい……。自転車操業になってるだなんて知りませんでした」
「何言ってるんですか」
吉田は鼻で笑った。
「俺は何も嘘をついちゃいない。それはあんたたちの空想だ」
「じゃあこの状況はどう説明すんねん」
なぜかエセ関西弁で突っ込んでしまった。
正直者でごめんね。
「なぜあなたはこんな廃工場で違法な銃を持って堀さんと友道さんを脅して我々をも巻き込もうとしたんですか!?妄想を抱いているのはそっちでしょうが。いい加減目を覚ませよ、いい年した大人の男が何言ってんだよ」
「…………」
私がきつく言ってしまうと吉田は明らかに目を逸らした。
さてはこいつ女性経験が少ないな。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時