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「玉、マジでここ?」
また翌日の夜、ワッターはお留守番で、車2台でとある所に移動した。
車の内訳はみっくん・ニカちゃん・千ちゃん・伊坂さん、私・俊くん・ガヤさん・玉ちゃんだ。
「ここだよ。俺の捜査なめないで」
「にしてもなあ」
ガヤさんのスマホから、みっくんの嘆き声が聞こえる。
ここは都内郊外にある廃工場、の近くに私たちは待機している。
「ここは友道フィナンシャルと吉田が潰した工場で、しばらく放置されてたのに今朝吉田が出入りしたのを確認したんだから」
「まあな」
「あとは皆さんの感覚と思考にお任せします」
そう言って玉ちゃんはシートに身体を預けた。
本当に私たちは作戦Bを遂行できるのだろうか。
向こうが翻意することだって有り得る。
「それはないんじゃない?」
また俊くんに心を読まれた。
「そう?人間だからやっぱやめたってこともあるんじゃない?」
「俺たちの推理通りの人間だったら絶対実行するんじゃない?その執念は凄まじいから」
「だよねえ」
推理の段階でそこまでするかねと思ってるからきっと心の声通りなら実行するはずなんだよね、なんて思っていたら。
「吉田だよ」
玉ちゃんの持ってるパソコンの画面に工場に入っていく吉田の姿が映し出されている。
やっぱりマジだった。
「で、俺たちはいつ動きます?北山さん」
「藤ヶ谷、今日のお耳の調子は?」
「Aの心の声が聞こえるぐらいにはね」
「まずは藤ヶ谷の耳で様子を窺おう」
「了解」
「はい、友道と玲奈さんが入ってきました」
玉ちゃんのパソコンには確かに二人が入っていくのが映っていた。
ガヤさんの聴覚に頼るため皆静かになる。
(A、今日のエンパス具合は?)
そんな中俊くんが呼びかけてくる。
それもガヤさんの妨げになるんじゃ?
でもまあ私もなんとなく集中してみる。
……背筋が凍りそうになった。
ガヤさんも目を開けた。
「皆今すぐ行こう。玉以外の男たちで前線だ」
「了解」
私たちはすぐさま車から降りて、でも気付かれないように工場に近づく。
工場の敷地の入口、俊くんとガヤさんがジャケットの内側を見た。
「銃使うの?」
「向こうが持ってるんだもん。Aだって殺気を感じたでしょ」
「まあ……」
多分犯人は常軌を逸してる男。
こちらの定規では測れない男。
私も身構える。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時