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「この会社一部では悪名高きところでしてね。ここの社員が堀さんの会社に出入りしてる所を撮りました」
「そうだったんですね」
「調べたところ借金は利子が高いゆえに膨大になっていました。とてもじゃないけど返済できなかったと思います」
「じゃあ堀一家は……」
「順を追って説明します。まず消息が分からなかった従業員の方たちですが、全員それぞれ別の職場で働いていました。その中の一人に話を聞いたところ、社長が倒産になる前に逃がしてくれたそうです」
「そうでしたか……」
「次に堀さんのご両親ですが、こちらはまだ消息が掴めておりません。おそらく友道フィナンシャルの手の中かと思われます」
「玲奈は……」
「玲奈さんはどうやら友道フィナンシャルの社長の友道宜夫が彼女を気に入っちゃったらしくてですね」
そう言いながらみっくんはタブレットで写真を表示させた。
「こんなふうに連れ歩いています。よって玲奈さんは無事といえば無事という感じです」
これで吉田さんにすべきであろう報告は終わった。
私には吉田さんの心の声が聞こえない。
(A、聞こえる?)
ニカちゃんからの心の声。
目を合わせる。
(吉田さんの声聞こえないんだけど。ニカちゃんは見える?)
(……かすかに)
ニカちゃんの目には吉田さんの感情が見えているらしい。
それを彼から教えられる。
……なるほどね。
(千ちゃんはどうだろうね)
(覗いてみれば?)
私は千ちゃんの顔を見る。
千ちゃんは私に気付いて顔を合わせる。
(俺、ニカみたいに会話はできないけど、通じてるのかな)
私は返事の代わりに瞬きを一つした。
(残念ながら……だね)
なるほどね。
これまで集めた材料と二人が感じたことを合わせて一つの事実が見えてきた。
「今後はどうなさいますか?僕たちはご依頼通り調べました。あとは吉田さん次第です」
みっくんは吉田さんに投げた。
彼の答えで私たちの方針も決まる。
「まずはありがとうございました」
(かくなるうえは……)
吉田さんが口を開いた瞬間、彼の心の声が初めて聞こえた。
その内容は私たちの方針を決定づけるものだった。
「ひとまずは様子を見ようと思います」
「いいんですか?僕たち警察との繋がりもありますから彼女さんを助け出すことは可能ですよ?」
「どうしても駄目だったらそのときはお願いします」
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時