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「確かに吉田は周りに付き合ってると言ってたし彼女の写真は持ってました」
「私も見たワンショットの写真ですか?」
「そう、それです。吉田はあの写真しかないようなんです」
「それはどこかに載ってた写真を引っ張り出してきて、彼女だと言い張ることは可能ですね」
「ええツーショットじゃないところがまた……。それと吉田の家に最近行ったという人がいて、その部屋女性の気配がまるでなかったみたいなんです」
「この1,2年で付き合ったとするならば堀さんの私物があってもいいですよね。でもこれは我々の知識でしか語れないですよね」
「まあ、そうですね」
「目撃情報はあるんですか?」
「それもあくまで私の周りだけの話になっちゃうのですが、なくて」
「じゃあデートは専ら彼女の家だったってことですかね?」
二人して考える。
はっきりしなくてすっきりしない。
私は別方向から考えるため伊坂さんの持ってきた資料を見る。
堀さんの会社は大手の下請けで産業を支える部品を作っているようだ。
そのための機械を伊坂さんの会社がリースしている。
「リースということは毎月支払いがあるんですよね」
「はい。滞りなく支払われています」
「我々の調べによればこの1,2年の業績は悪くなってるみたいですね」
「えっそうなんですか」
資料の中の売上高のグラフは横ばいになっている。
「これ伊坂さんが?」
「……はい。吉田に言われて」
伊坂さんは目を伏せた。
「疑問を持ちませんでした?」
「……はい。私は吉田以外の人とも仕事をしてますし、吉田の営業先はこれだけじゃないので」
まあ無理もない。
私は秘書という立場だったけど常務には一方的に予定を言われてそこに合わせる他なくこき使われてたもんな。
営業事務だって営業の人に言われるままサポートしてるから疑問を持ってもスルーしがちなんだろう。
この時点でも様々な疑問点が思い浮かぶ。
私はまた別角度で見ることにした。
「吉田さんの
少し強調して言えば伊坂さんの目に動揺が見えた気がした。
すかさず心の声を聞いてみる。
(今まで誰に言っても否定されてたのに……)
つまりは伊坂さん自身感じていたことだけど周りに笑われたり否定されたこと……。
どう掘り出そうかと考えていたら。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時