＊ ページ15
・
(Aの心が読める条件って何だろう)
「条件？」
「びっくりした。……宮っちはテレパス、Aはエンパスっていう違いは分かったんだけど、Aって心の声が聞こえるときと聞こえないときがあるじゃん？」
「個人的にはラジオの周波数みたいなもんだと思ってるんだけど……。皆は合う。俊くんは閉じられてるから分からないけど、俊くん次第で会話はできるから。今回は伊坂さんは聞こえた。吉田さんは全然聞こえなかった」
「過去の事件は？」
「……最初に事件は聞こえた、私の前職のあれも。みっくんの兄弟子の件は犯人の感情なら。『幸せの街』の人たちは聞こえなかった。レストランの件もだ」
改めて分類したらこの違いって周波数だけで片付けていいのだろうか。
私はエンパスと考えると。
「人の心？あまりに凶悪な人は人の心がないから無理？」
「なるほどね」
もちろん例外はあるだろうけどそれで考えたら。
「吉田さんはどっち？」
「多分吉田さんとはもう1回会うだろうから確かめる」
「大丈夫？」
「俺みたいな人は増やしたくないから」
そう言う千ちゃんの目は憂いがなくなったからきっと真実を見抜けると私は確信した。
その日の晩、私はグランシャリオに戻り、喫茶店で伊坂さんと会った。
営業時間が終わってるのにワッターは紅茶を出してくれた。
「すみません、ご足労いただきまして」
「いえ……でも私が話すことありますでしょうか。私は普段営業事務で吉田のサポートをしてますが、彼女さんの親の会社には行ったことがなくて」
「何でもいいんです。どういうことが手掛かりになるか分かりませんから」
「そうですか……」
伊坂さんは紅茶を一口飲んだ。
美しい目には少し迷いがあるように見えた。
(でもこれで彼のことを言うのはバイアスがかけてしまうのでは……？)
伊坂さんの声は探ろうと思えば聞こえる。
まあ彼女は素直そうな方だと判断してるんだけど。
「本当は依頼人のことを全面的に信じたいのですが、もしものことがあったときはこちらの沽券に関わることになるので依頼人のことも多少調べているんです」
これは本当のことだ。
知っている人からの依頼だったらする必要はないが、初対面の人はどんな素行か軽く調べたうえで依頼に応えている。
今回は吉田さんの人となりを知る必要がある。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユタカ２ | 作成日時：2023年8月27日 10時
