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「A、大丈夫?」
「ごめん。なんか皆の感情って伝わりやすくて」
「こっちこそごめん。辛い話させちゃって」
「ううん」
「だから自分のことで手一杯で吉田さんを判断できなかったな」
「そっか、千ちゃんは嘘が分かるもんね。それって組織の施設に通ってからだったよね」
「うん。小さい時から嗅覚が鋭くて親を困らせて、気付いたらあそこに通ってた。たくさん匂いや香の勉強をさせられたよ。それでそんな力を……。嫌にはなるけど、それが使えるならいくらでも使いたい」
これが千ちゃんの『幸せの街』の感情。
しかと受け止めた。
誰かに話すことで解消することは絶対あるから。
私は皆の一助になりたいから。
「ありがとう、話してくれて。……ということは今回の件は組織が絡んでるの?」
「それは調べてみないことには。今ニカたちが調べてくれてるから」
「千ちゃんは調査に行かないの?」
「ミツはAに話を聞いてもらえとしか言ってなかったもんね。電話するか」
千ちゃんはスマホを取り出す。
その表情から少しはスッキリしたのかなと考える。
「A、ニカから」
千ちゃんはみっくんと話してたんじゃなかったっけと思ったが、今みっくんとニカちゃんが一緒に行動していると考えたら不思議じゃないのでスマホを受け取る。
「ニカちゃん何?」
「A、伊坂さんと話す機会セッティングしといたから。彼女の仕事終わりになっちゃうんだけど……」
「平気。ありがとう。場所は?」
「彼女の方から出向くっておっしゃってた」
「じゃあ用心して来てもらって、うちの喫茶店が無難かな。閉店後なら誰もいないし」
「用心?」
「念のためね」
「Aが何を考えてるのか目見りゃ分かるかもなのに、電話だ」
「調査頑張ってね。千ちゃんも合流するし」
「ああ。じゃあな」
ニカちゃんとの話を終えてスマホを返す。
すると千ちゃんは怪訝そうな顔で私を見る。
「A、念のためって?」
「念のためは念のため。伊坂さんだって協力者なんだからもしかしたらもしかするかもじゃん」
「そうだよね……」
千ちゃんは目線を下げた。
何か思うところがあるのかも。
少し目を見る。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時