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次の日も私は『2s』を訪れた。
店のドアには休みという札がかけられている。
「いらっしゃいA」
「うん」
部屋の空気はどんよりとしていた。
誰かの感情を受け取ってしまうことは時に辛いんだけれど、誰かのためなら私は踏ん張れる。
「ここニカが住んでるから水とお茶と酒しかないんだけど」
「じゃあお茶で」
千ちゃんが麦茶を出してくれて、私の向かいに座る。
「Aには癒しのパワーがあるって皆言ってた」
「それ私にはよく分からないんだけど」
「分からなくていいよ。俺たちが癒されてることが事実なんだから」
「皆がそう思ってくれてるならそれでいいや」
皆が私の存在理由を決めてくれるならそれで良かった。
「……俺さ」
千ちゃんがこう口を開いた瞬間、自分の身体に感情が重くのしかかったのを感じた。
「吉田さんの話聞いてたらどうしても自分と重ねちゃって」
「……千ちゃんご家族は？」
「いないんだ」
私は自分を落ち着かせるために麦茶を飲んだ。
「俺の家、自分で言うのも何だけど裕福で資産があったはずなんだよ。だけど2年前、家族全員と連絡が取れなくなって実家に行ったら実家が競売にかけられてた」
「借金をしてたの？」
「ミツたちに調べてもらったらそうで、口座を調べてもらったら『幸せの街』に多額の献金をしてた」
「それは何で……」
「俺が大学を卒業してからニカとここを開いて自由にやってたからじゃない？俺の力も組織は使いたかったみたいだし。でも親は俺には何も言わず金を出した」
「ご家族は今は？」
千ちゃんは首を横に振った。
「どこにいるのか全然分からない。警察にも相談したけどけんもほろろの扱いで……。宮っちとガヤさんも調べてくれたけど影さえも掴めない感じで……」
千ちゃんの瞳が潤む。
千ちゃんの深い悲しみが胸に迫り、私は普通に座ってはいられなかった。
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作者名：ユタカ２ | 作成日時：2023年8月27日 10時
