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というわけで翌日の夜、作戦は決行された。
舞台は『シュネル』。
もちろん信根さんの全面協力を受けている。
私は俊くんと一緒のテーブルでこないだと同じようにデートを装っている。
ついこのままデートしたい気分だ。
みっくん、ワッター、ガヤさんは同じテーブルにいて、友人で仕事帰りにやって来ました風を装っている。
玉ちゃんは近くに止めてある車の中から店を監視。
ニカちゃん千ちゃんはもしもの時のために車の中で待機している。
以上が8人の配置だ。
果たして本当に昨日ガヤさんが聞いたことは起きてしまうのか。
いや、そんなことはさせない。
事件を未然に防ぐことが信根さんのためであり、ワッターのためにもなる。
(A、肩肘張ってる)
向かいの俊くんからアイコンタクトが送られた。
(こういうパターンは初めてだから)
(大丈夫。AはAのままで)
俊くんから励まされるとついその気になっちゃう。
(俊くんたちすぐ今の作戦思いついたじゃん。慣れてるの?)
(何度かね。脅迫状が送られてきたら未然に防いできた)
そういえば事件ファイルの中にそういった案件がいくつかあったような。
(そもそも脅迫文を送ってくる人って何で?)
(何かの犯罪をする人ってどこかで自己顕示欲が強いんだよ。脅迫状送って相手が怯んだら犯人はそれで勝ちみたいな気分になる。実際に行ったら他人の目が自分に向くし、行わなくても愉快な気持ちになる。……あくまで俺の読み取りだけど)
(今回の狙いは?)
(犯人の狙いはとにかく面目を潰したいだけに見える)
(……潰すときは潰される覚悟を持たないと駄目だよね?)
(A、まだ抑えてね)
(お二人さん顔が険しいよ)
ガヤさんの声が飛んできた。
そうね、ガヤさんも聞こえてるんだった。
(難しいんだよね、潜入捜査って)
(演技力鍛えなきゃな)
(戦闘民族モードのAはなかなか……)
(二人とも。玉からライン)
ガヤさんの声で私はスマホを見て、俊くんに見せる。
玉ちゃんからは来たとだけ書いてあった。
「いらっしゃいませ」
吉村さんの声がした。
本当に来た。
いかにも堅気じゃなさそうな人たちが3名。
吉村さんが席にご案内した後。
「いらっしゃいませ。今晩もありがとうございます」
彼がオーナーシェフの武市だ。
ヘコヘコ頭を下げている。
果たしてその腹の中はどうなっているのか。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年8月27日 10時