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「俺って信用できない?」
「そういうわけじゃ決してないんだけど……」
現時点で浮気だとか不倫だとかの心配はないだろう。
となると問題は「生活」の方だ。
「……確かにな、俺気付いたらAに甘えて家事とか任せっきりにしちゃいそう」
まだ一緒に暮らしたことはない俺たち。
一緒に生活していくことを考えたら夢ばかり描いててもしょうがないと思ってしまうかも。
「そうだよ。宏光そういうところあるもん」
これは本当に反省しなきゃいけないところだ。
俺は30を過ぎた大人だ。
変わるならここしかない。
「あのさ、A」
「何よ」
「俺はもう30年以上俺で生きてきたから抜本的には変えられないと思う。でもAのためならマイナーチェンジは出来る。俺だって一人暮らしは長いから家事だって一通りはできる。でも俺、なかなか察しが悪い男だと思うから、不満に思うところはその都度言って?そしたら折り合いはつけられると思うから。……だからゆくゆくは俺と結婚して下さい!」
頭を下げて手を伸ばす体勢になったら、Aはその手を握ってくれた。
俺は頭を元に戻す。
Aは笑っていた。
「私ばかり求めちゃダメだね。私にも駄目なところはちゃんと言って?私だって宏光のためなら変えられる。……だからよろしくお願いします」
「A」
またハグをする。
この腕の中にずっといて欲しいなと願う。
実際はやってみないと分からない。
だけどこの意識を持ち続ければきっと上手くいく。
そう信じていくしかない。
腕の中のAにキスをする。
Aは可愛く笑った。
この世で一番大切な人は生まれた時から一番近くにいた彼女だなと心底思った―――。
END
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年7月26日 17時