紅の輝きは一番近くにある〈Ki〉 ページ6
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恋は街中に降り注いでいる2より
横尾さんの店を開ければ見知った顔が二つ。
その一つが俺の顔を見るなり快活に笑う。
「また喧嘩した?」
「うるせ」
俺はそいつ、藤ヶ谷の隣に座る。
「ミツ、今日はこういうメニューだけどどうする?」
「生姜焼き」
「了解」
カウンターの中には横尾さんが一人。
いつもいる彼女がいない。
「荻野は?」
「恵麻さんは今日は用事。だから気にしないで」
横尾さんにも藤ヶ谷にも見破られている。
俺の同級生であいつとも繋がっている荻野がいないのは好材料だ。
「で、喧嘩したと」
「そう」
「原因は?」
「仕事上で」
ここはあかつきアーケードという商店街の一角にあるお店。
俺もこの一角で服屋を営んでいる。
で、俺は今財津Aと付き合っている。
彼女は幼馴染の腐れ縁だったが、半年ほど前から付き合うようになった。
彼女はIT企業に勤めており、そのスキルを活かして以前から俺の店のネット関係を手伝ってくれている。
そんな彼女と仕事のことで喧嘩した。
悪いのは俺。
俺のこだわりが強いせい。
分かってるけどつい反発してしまった。
「よく喧嘩するね、二人は」
「二人はしないの?」
横尾さんも藤ヶ谷も自分の彼女と公私ともにいる。
どうしたって仕事の方針で意見が合わないこともあるだろうに。
「そりゃあ俺が書きたいものとファンが求めるものが違うときはあるからそういうときの空気は悪くなるけどそこは擦り合わせよ」
「商売にしたって人間関係にしたってどこかで妥協はしないと。突き進むのもかっこいいけど」
「俺の店で?」
「はい、駄目。財津さんはネットショップで大いに貢献してるでしょ」
「すみません」
俺が俺がとなってしまうのが自分の悪いところ。
と思っているんだけどなかなか直せない。
「はい、お待ち遠さま」
「いただきます」
横尾さんの豚の生姜焼き定食は日本一だと思う。
食べていたら負の感情が落ち着いてきた気がする。
落ち着いてきたらずっと俺の中にあることを2人にも訊いてみたくなった。
「二人は将来どう考えてるの?」
「まあ……」
「全然考えてないわけじゃないよ」
藤ヶ谷は腕を組む。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年7月26日 17時