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島崎さんは多分思い詰めているからそこにまで考えが及ばなかったのだろう。
何事も客観的事実が物を言うはずなんだけどね。
「もちろん自社の人に訴えることもアリなんですが、取引先の人事部とかにも言うと良いかもしれません。そういった方ならきっと女性全般にそういう態度なんでしょうから」
「そう……ですね。実践してみます」
島崎さんの表情は心持ちスッキリされていた。
誰かに話すことでスッキリすることはあるからね。
「もしそれでも解決しなかった場合はこちらへご相談下さい。私かマスターに『北斗七星』と言えばお通ししますので」
私は探偵事務所の名刺を渡した。
「探偵さんなんですか?」
「探偵の助手、といった感じです」
「でも店員さん探偵が似合いますよ。私店員さんに話してスッキリしました」
「それなら良かったです」
島崎さんはその後マカロンを食べてカフェオレを飲み終わり店を出た。
その時には入った当初の辛そうな表情はなくなっていた。
「Aって凄いな」
「何が?」
「そうやって他人の気持ちに突っ込んでいって寄り添っていくの。俺には無理」
まあ私は自分の他人の声が聞こえるという能力を活用してるだけですよ。
「そうかなあ。ワッターだって神の舌で作った飲み物や食べ物でお客様をハッピーにしてるじゃない。さっきの方はそれもプラスされてたと思うよ」
「まあ……それが独立した理由でもあるから」
照れちゃってる。
ワッターはそういう可愛いところもあるよね。
そんなわけで私はこうして時々お節介を焼いてしまう。
自己満だとは思うけど、ああして心が晴れやかになってくれたらいいじゃんと思ってやっている。
こうして今日の営業時間が終わり、その間に玉ちゃんも帰ってきて、私は店の前を掃除する。
「A」
すると俊くんとガヤさんがやって来た。
「俊くん、ガヤさん、仕事終わり?」
「そう。今日は平和だったからね」
「じゃあ皆の所行こうかって」
「そうか。中に入ってて」
私は掃除を終え、中へ戻ると刑事組はのんびりとし、ワッターは多分上で夕食作りをしているようだ。
「二人ともワッターのご飯食べるでしょ」
「うん、そうさせてもらう」
「Aは良いな。渉のご飯昼と夜食べてるんでしょ」
「うん。一日中ここにいるときはね」
これで月収は貯金もできるぐらいもらえてるんだから本当にありがたい。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年7月26日 17時