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「お待たせいたしました。カフェラテです。それとこれどうぞ」
「頼んでないですよ」
「サービスです。お客様は週に1度は来て下さいますし。それに疲れた時は糖分摂取が効果的ですから」
(何で分かったんだろう)
島崎さんはそう思いながらマカロンを口にした。
彼女は顔を綻ばせた。
このマカロンはワッターの手作り。
甘くてサクッとしてて美味しいんだよね。
「何かお悩みありますか?」
「えっとどうして分かったんですか?」
「お客様が辛そうな表情をされていたので」
「……いいですか?」
「はい」
私はずっとこうしてきた。
誰かの感情をキャッチしたらそれに応じる。
時にびっくりされたり引かれたりするけど、それでマイナスの感情がゼロになったり、プラスになればそれでいいじゃんと私は思ってる。
私は彼女の向かいの席に座った。
「実は……この後行く取引先の方がものすごく苦手で……」
「何か不愉快なことされました?」
「はい、私一人で赴くと……その方40代ぐらいの男性社員さんなんですが、私に対して威圧的で話半分な態度なんです……」
「それは……パワハラですね」
秘書時代にもいたなそんな奴と思い出す。
私は常務の秘書だったわけだけど、当然それクラスの方とお会いする機会が結構あった。
色々サポートしてる私をまるで視界にも入ってないかのような態度を見せる人がいた。
あの常務も決して男女平等という感じではなかった。
だからここに来て、7人皆優しいのが新鮮だった。
姫扱いというのも悪くはない。
おかげで少しわがままになりそうだけど。
「他の方に相談されましたか?」
「先輩や上司に話したんですが、皆その方に騙されてて……同じ部署に同性はいますけど悩みを相談できるほどじゃなくて」
「そうですか……」
この方仕事でもこういう状態ならプライベートでもモラハラ男やDV男に引っかかりそうだ。
彼女の今後の人生のためにも策を講じた方が良いだろう。
「今後どうされたいんですか?お客様は」
「……私は好きでこの仕事をしているので……」
「嫌々仕事はしたくないですもんね。だったら記録しておきましょう」
「記録ですか」
「はい。ボイスレコーダーなどで。人間最初のイメージがつくとなかなかそれが変わることはないんです。なのでただ感情的に言うのではなく客観的な証拠があれば意識は変わると思います」
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年7月26日 17時