* ページ29
・
実家に寄ったら家族皆いなかった。
俺はそのまま自室に行き、この前のを元に戻す。
次のコンペどうしようかなんて思いながらページをめくる。
そしてちらつくのはAとその隣にいた男。
もう付き合っているんだろうか。
だとしたら手遅れ?
それでも頑張ると俺は決めた。
決めたったら決めた。
ピンポンとチャイムが鳴る。
玄関のドアを開ける。
「あれ?健永一人?」
「そうだよ」
「なーんだ。ママさんと話したかったな。お邪魔します」
今日は俺がAを呼び寄せた。
話があると言って。
「何、健永、話って」
「それは……」
いつも言えなかった気持ちを外に出すのは難しい。
だけどたまには素直に言ってみたっていいじゃん。
それで何かが変わるなら。
「……こないだ店で偶然会ったとき男の人と一緒だったじゃない?」
「うん」
「その人と付き合ってるの?」
「えっ付き合ってない。あの人彼女いるし。あれは仕事の打ち上げ」
「そうなんだ……」
じゃあAの気になってる人は別の人?
今はひとまずそんなことどうでもいいや。
「あのさ……俺さ」
「ん?」
「Aのこと好きなんだ。……だから俺と付き合って下さい」
「…………」
「…………」
しばしの沈黙。
すると。
「そっかあ」
Aはくすくすと笑いだした。
「そっかあ、健永は私が好きなのかあ」
すごく楽しそうに言うから。
「そうだよ、好きだよ」
つい叫ぶように言ってしまった。
するとAはものすごく良い笑顔で俺に近づいてきて。
「…………」
キスをされた。
「私も健永が好き。じゃなきゃこの年になって実家まで遊びにいかない」
「えっ?えっ?」
予想だにしなかった展開に戸惑うばかりだ。
「健永が私のことどう思ってるか分からなかったし……」
「それが俺だって。母さんに色々恋バナしてたのは?」
「それは恥ずかしくて……」
そう言って顔を赤くするAは可愛かった。
たまには自分の気持ちを表に出したら思いがけない展開になっちゃった。
でも本当に嬉しい。
「俺たち、付き合うでいいんだよね?」
「当たり前でしょ?他になくない?」
「だよね。これからもよろしく」
「こちらこそ……」
今度は俺からキス。
今日から俺の幼馴染は俺の彼女になりましたとさ。
END
・
57人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年7月26日 17時