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Aの恋愛事情は大体母親から聞かされる。
まあAも分かってて言ってるんだろうけど。
「同じ部署の先輩みたいよ」
「社内恋愛ね」
そういえば俺の身近なところでも社内恋愛してる人たちがいるなと思い浮かべる。
もしかしたらさっきのAのスマホの通知はその人からのだったのかもしれない。
年齢的にももうこの年季の入った片想いも終わりにしないといけないのかもしれないと思いながら俺は実家を出た。
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「千ちゃん」
「ガヤさん、何?」
俺には社内にフランクに接している人が6人いる(1人は同期だけど)。
そのうちの一人、ガヤさんに声をかけられた。
「この企業のコンペに参加したいんだけど、千ちゃんやってみる?」
ガヤさんが見せてくれた資料を見れば。
「この企業……」
「知り合いでもいる?」
「俺の幼馴染が働いてる」
なんとAが働いてる会社のコンペだった。
「へえ。なお良いじゃん」
「俺で良ければやりたい」
「分かった。じゃあ早速だけどミーティングしたいからこの後時間作れる?SEは宮に声かけといた」
「今やってるのに目処をつけたら大丈夫だと思う」
「了解」
Aの会社と仕事ができるかもしれない。
そう思うとワクワクした。
Aに伝えたい気持ちは少しあったけどまだ決定事項じゃないし守秘義務に違反するからずっと伏せておこうと思った。
その後のミーティングはノリノリでできた。
ガヤさんにも宮っちにも今日調子良いねと言われた。
ミーティングの後はとっくに定時を過ぎていたのでそのまま3人でご飯を食べにいく。
食べている間はなぜか恋バナになった。
ガヤさんは同じ店に通っている人と付き合うようになったし、宮は同じ部署の後輩と社内恋愛をしている。
「宮って社内恋愛隠してるの?」
うちはそういった禁止事項はないけれど暗黙の了解で仕事に支障が出ない程度にはということになっている。
「大っぴらには言ってないけどバレてるよなあ。スケジュールに余裕があるときは一緒にランチとかしてるし」
「千ちゃん社内恋愛したいの?」
「えっ誰誰?」
「いや、俺じゃないよ、友達がね」
なんて言ったところで本当にその友達、Aが現れるんだから世間は狭い。
目の端に彼女を捕らえて見ていたらAと目が合った。
隣には男の人がいた。
彼女はその人に何かを言ってこちらへやって来た。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年7月26日 17時