今度はお店以外で〈F〉 ページ21
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俺には週に一回は行っている店がある。
「いらっしゃーい、おう太ちゃん」
「こんばんは」
ここは最寄り駅の近くにある和食屋。
カウンターしかなくて決して広くはないお店だけど大将がとにかく人が良くて、料理も美味しいから気に入っている。
それはなんやかんやで一緒にいる同僚たちといる時と同じ空気感だからかなと考える。
でもそんな彼らにも教えていない、俺の秘密の場所がここだ。
「太ちゃんいつものでいいか？」
「はい、お願いします」
「おう、Aちゃんいらっしゃい」
「こんばんは。藤ヶ谷さんお隣いいですか？」
「どうぞどうぞ」
彼女は和田Aさん。
同じくこの店の常連さんで、この地域に住んでいて、金融関係のお仕事をされている。
それぐらいの情報しか知らないのに、現在俺がものすごく気になっている人だ。
「Aちゃんもいつものでいいかい？」
「はい」
仕事終わりなのにそれを感じさせない明るい笑顔を彼女は見せた。
「お仕事お疲れ様です」
「藤ヶ谷さんもお疲れ様です。今週はここ初めてですか？」
「ですね。今週は仕事が立て込んでて、なんとか今日目処がついたって感じで」
「藤ヶ谷さん営業されてますもんね」
「でもチームで動いてるから楽しいですよ」
俺はとあるWebデザイン制作会社の営業として働いている。
前に出るのは俺だからその苦労はあるけど、せっかくエンジニアやデザイナーが頑張ってくれたんだから俺も頑張らなくちゃって常々思っていて張り合いがある。
「和田さんは今週も来てました？」
「私も何かと忙しくて」
「それはそれは、お疲れ様です」
「ありがとうございます」
「はいよ、お待ち」
まずはビールが2人の前に出された。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です」
2人で乾杯をした。
この瞬間がとにかく楽しい。
俺がこの店を見つけたのは2年前。
近くに引っ越してきて、良いお店はないかなと探していたときに店構えに惹かれ、大将にも好感を持ったので通うようになった。
和田さんと出会ったのは1年半前。
来る度に彼女がいるなと思うようになって、彼女もそう思ってくれてたみたいで自然と話すようになった。
それからはずっとここで会う関係。
連絡先も知らない。
そう同僚たちに言えば、皆同じ反応だった。
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作者名：ユタカ２ | 作成日時：2023年7月26日 17時
