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「でしょ?だから早く言っちまえって言ってるの。もし砕けたらお前の骨俺が拾ってやるよ」
兄が珍しく良い顔で笑った。
こうしてれば兄だって普通にイケメンなのに。
「というか自分の友達と自分の妹が付き合うってお兄ちゃん的にはいいんだ?」
「あいつは俺の親友だし、お前は血の繋がったただ一人の妹だし、その二人が付き合ったら面白いだろ。俺も良いように利用できるし」
少し前言撤回。
やっぱり兄は意地が悪い……なんて思ってたら。
「えっ?Aさん?」
兄よりも聞いているクリアな声がして振り向けば。
「えっ、宮田さん……」
「王子様のお出ましだな」
そう呟いて兄は私を出来から立たせ宮田さんの方へ背中を押した。
少しよろめいて宮田さんが受け止めてくれる。
「大丈夫?」
「はい……」
その声が聞いてた中で一番優しくてキュンとなったけど、兄に文句の一つでも言わないとと思ってたら、また良い笑顔で。
「じゃあ、宮田、Aをよろしく」
「うん、分かった。……行こうか、Aさん」
「はい……」
いつの間にかさりげなく手が繋がれていてまたキュンとなった。
私たちは居酒屋を出て、私は宮田さんについていくしかなかった。
「宮田さんも兄に呼び出されたんですか?」
「うん。付き合えって言われて。そしたらAさんがいてびっくりした」
「私もただ理由なく兄に呼び出されて、そしたら宮田さんがいらっしゃって……」
「あいつにまんまと援護射撃されちゃったなあ。後が怖いわ」
そう言って宮田さんは立ち止まった。
橋の上、川の向こうにスカイツリーが見える。
というかこのシチュエーションってもしかして。
手が繋がれたまま宮田さんが私の方を向く。
駄目だ、ドキドキしすぎて死にそう。
「あいつにドンと背中を押されちゃったから言うね。……俺はAさんのことが好きです。良かったら俺と付き合って下さい」
やっぱりそういうシチュエーションだった。
そんなの私の答えは一つ。
「……はい。私も宮田さんのことが好きです」
「良かった」
宮田さんの手が私の目尻を拭う。
あれ、私泣いてたんだ。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年7月26日 17時