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「うるさ。お前があいつと話してるのを見る度に思ってたよ。宮田に垂らし込まれてんなあって」
「……そうでしたか」
「にも関わらずお前は他の男と付き合ってたわけね。可哀想、あいつとあいつ」
「何でお兄ちゃんが私の歴代彼氏知ってるの」
「母さんが教えてくれるんだよ。Aは誰々に告白されて誰々と付き合ってるって」
確かに母には相談したが兄に筒抜けだったとは。
「一回あいつに告ってみたら。あいつがどう思うかは知らんけど」
「簡単に言わないでよ。宮田さんって今彼女いるの?」
「さあね。自分で考えてみることだな。じゃあな」
「ちょっお兄ちゃん」
一方的に電話が切れた。
本当に兄が意地が悪いし口が悪い。
結局兄からはまた何も教えてもらえなかった。
そして告白か……と思ったりした。
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隣人の宮田さんはこれまで通り優しかった。
たまたま会ったら挨拶して下さるし、運が良かったら行き帰りも一緒だったりもした。
Aさんって声をかけられる度にキュンキュンして、何もされてないのに私は骨抜きにされていった。
そんな中彼女さんはいらっしゃるのかとずっと考えていた。
兄は教えてくれないし考えてみろって言われたからね。
昔から知っていることはアニメやゲームが好きなこと、最近知ったのは私とは異業界の企業の人事部にお勤めしてるということ。
なんか宮田さんのことを知っているようで知らない。
でもこれ以上踏み込むのも怖くて思考が停止してしまう。
そんなあるときのこと。
私は兄に居酒屋に呼び出された。
兄はこうして気まぐれに私に絡んでくる。
「お前まだあいつに何も言ってないの?」
顔を合わせるなりこう言われた。
「言えるわけないでしょ」
「何でだよ。当たって砕けろって言うだろ」
「だから砕けたくないんだって」
何なんだ、この兄は思いながら私はハイボールを飲んだ。
「お兄ちゃんは私をどうしたいわけ?」
だからというわけじゃないけど、酒に任せてつい本音を言ってしまった。
「Aには後悔のない人生を送って欲しいだけだよ」
兄から多分ほぼ初めてまともなことを言われた気がする。
「このままだとお前ずっとうじうじしたまま過ごすだろ。その間にあいつが結婚なんてしちゃったらどうするよ」
「……嫌だ」
宮田さんが誰かのものになっちゃうのは嫌だった。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年7月26日 17時