私のお隣さんは〈M〉 ページ1
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私には中学生の時からほのかに恋心を寄せている人がいた。
その人は兄の高校時代からの友人で、ものすごく馬が合ったらしく、家に頻繁に遊びに来ていた。
「宮田、妹のA」
そんな兄の雑な説明でも宮田さんは綻んだような笑顔を見せて。
「Aさん、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。兄がお世話になってます」
「こちらこそ」
年下の私にも丁寧に接してくれて感じの良い人だなと思った。
それからは兄を介してだけど話すようになった。
話す度に優しい人だな、素敵な人だなと思って、ドキドキして、次第に好きなんだと思った。
兄の高校時代はずっと宮田さんといたので彼が家に来たときは会えたが、大学は別々になり兄は外で宮田さんと会うことになり家には来なくなった。
こうして時は流れ、私は社会人になり一人暮らしを始めた。
最初は自分のことで精一杯で余裕がなかったけど、夏あたりでようやく自分のペースを掴み始めてた、そんな頃に。
「もしかしてAさん?」
今日の仕事が終わり無事マンションまで着いて鍵を開けようとしたとき声をかけられた。
それは忘れられなかった声だった。
「えっと、覚えてるのかな、君のお兄さんの……」
「覚えてますよ。宮田さん」
「やっぱりAさんだ。久しぶり」
「……お久しぶりです」
宮田さんは昔と変わらない綻んだような笑顔だった。
「俺のお隣Aさんだったんだ」
そう言って宮田さんは私の右隣の角部屋へと歩いていった。
「宮田さん今も兄と交流ありますよね?」
「うん。月に2,3回は会ってる」
「うわ、何で教えてくれなかったんだろ」
「本当だよね。あいつも意地が悪いわ」
私たちの共通の話題である兄のことで笑い合う。
やっぱり宮田さんは感じの良い人。
「というわけでこれからお隣さんとしてよろしくね」
「よろしくお願いします」
お互いペコリと頭を下げて、私が部屋に入るときはおやすみなさいと言ってくれた。
その声はとても優しかった。
なんと私のお隣は私の好きな人だった。
早速私は兄に連絡した。
するとこう返ってきた。
「お前まだあいつのこと好きなの?」
「えええっ!?」
思わず指摘されて大声が出た。
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作者名:ユタカ2 | 作成日時:2023年7月26日 17時